欧州は主要国の政権が弱体化、政策停滞の懸念 ポスト・メルケルは弱く、マクロンも支持率低下

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他方、フランスはどうか。大統領選挙は2022年4月とまだ先だが、再選を目指すマクロン大統領は、早くも選挙戦をにらんだ政権の立て直しと政策の軌道修正を迫られている。2017年の就任以来、フランスでは燃料税の引き上げに反対した黄色いベスト運動だけでなく、労働市場改革や年金制度改革に反対する大規模ストライキ、警察の暴力事件や市民の監視を強化する治安関連法案に抗議する大規模デモなどがたびたび発生している。

マクロン大統領が旗揚げした中道政党・共和国前進は、昨年6月の統一地方選で惨敗し、左派寄り議員の離党で議会の過半数を失っている。マクロン大統領の支持率は低迷し、来年の大統領選挙の世論調査では、前回同様に極右のルペン候補と首位の座を競っている。復権の機会をうかがう右派・左派の両勢力、環境政党や最左派の候補との差もそれほど大きくない。

マクロンは内憂に負われ、EU改革は前進せず

決選投票では反極右票が集結するため、2回投票制の大統領選挙で極右候補が勝利するハードルは高い。だが、このまま大統領の人気が低迷し、乱立する対立候補の支持が一本化していけば、初回投票でマクロン氏が落選するおそれも出てくる。支持率回復を目指し、マクロン大統領は右派・左派の双方から有権者を奪う全方位作戦を展開している。昨年7月に内政を担う首相を交代し、若者や左派を中心に国民の関心が高い気候変動対策や社会政策を重視する姿勢を示した一方、イスラム過激派テロへの厳しい対応や治安維持の強化など、右派を意識した政策も同時に採用している。

マクロン大統領が就任した2017年は、フランスとドイツのダブル選挙イヤーだった。先に選挙を終えたマクロン大統領は、ドイツで連邦議会選挙が行われたのと同じ日に演説し、自身が描く欧州の将来ビジョンを披露した。これはドイツに対するEU改革での共同歩調の呼びかけだったと言われている。今回は先にドイツが選挙を終えるが、来年のフランス大統領選挙が終わるまでは、EU改革に目立った前進は望めない。

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