エルピーダに訪れた春、増資が消えても業績回復は揺るがず
台湾との資本提携を断念したエルピーダメモリ。昨年6月末に改正産業活力再生法の第1号に認定。事業再構築計画では公的資金投入のほか、台湾政府主導のDRAM事業統括会社(TIMC)からも200億円の第三者割当増資を予定していた。だが、台湾立法院の反対などにより提携を見直した格好だ。
もっとも、坂本幸雄社長は昨年末、「台湾からの資金は入らないだろう」と予想。「それでも(事業を)やっていける」との自信を示していた。
というのも昨年11月、台湾のDRAMメーカー2社とOEMや技術供与契約を締結。もともとTIMCとの提携には経営基盤の脆弱な台湾勢を一つにまとめ上げ、価格競争に歯止めをかける狙いがあったが、設立が難航する中、各社との個別提携も模索。自社陣営に引き入れる形で当初の目的に近づいた。
事業環境も存亡の危機にあった1年前から一変している。現在の1ギガバイトDRAMのスポット価格は3ドル超。通常、1~3月期は需要が落ちるが、価格はむしろ上昇。2008年末の60セント割れからは5倍の水準だ。
高騰の理由はいくつかある。09年初に業界大手の独キマンダが破綻、生き残ったメーカーも生産を絞った。その後も設備投資が滞り、供給能力が減少。他方、ウィンドウズ7効果などによりパソコン出荷は世界的に順調で、需給は逼迫している。
「当面は高値安定で推移する。年央から下がるだろうが2ドル前半までで大崩れはない」と、半導体調査会社アイサプライ・ジャパンの南川明副社長は予想する。投資再開の動きもあるが、生産能力が増えるのは早くて今年後半となるからだ。
価格の上昇を受け、エルピーダの業績も急回復している。09年4~6月の営業赤字423億円から下期に挽回し、10年3月期には230億円前後の営業黒字となる見込み。現在の業界の損益分岐点は1・5~1・8ドル程度。相場の大崩れがなければ、11年3月期の営業利益は1000億円を軽く突破する可能性が高い。
相場回復→投資競争→供給過剰による価格急落を繰り返してきた半導体業界。来る“冬”に備え、微細化によるコスト競争力を磨き続ける必要はあるが、ようやく訪れた春をしばらくは楽しめそうだ。
(山田雄大 =週刊東洋経済2010年4月10日号)
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