ITバブル崩壊時と違って今の受注は”実需”です--村田恒夫 村田製作所社長
五輪後には薄型テレビの需要が一時的に落ちるかもしれないが、薄型テレビの普及率はまだ低く、世界需要は今年通年では30%強の伸びが見込める。携帯電話も今年は1割近く伸びて12億台、パソコンもウィンドウズ・ビスタが普及して買い替えが進む。よほど米国のビジネスが落ちないかぎり大丈夫ではないかと見ています。
--ITバブル後のような在庫急増、業績悪化の二の舞いはないと。
考えられません。ITバブル後の在庫問題は、部品の作りすぎというよりも、セットメーカーやEMS(電子機器の受託生産企業)からの過剰発注が大きな要因でした。その後、欧米メーカーではサプライチェーン・マネジメントが構築されており、当時と違って今の受注は実需に基づいています。
電子製品の高機能化につれ、使用される部品の搭載点数は飛躍的に伸びている。ブラウン管テレビ1台に使われるコンデンサーは200個ぐらいですが、液晶テレビの32インチ以上になると700~1400個。携帯電話にしても第3世代の普及に伴い、SAWフィルターの使用量が第2世代の何倍にも増えている。こうした部品点数の急増が操業度上昇につながってきたわけで、今後もその傾向は変わらないでしょう。
円高は厳しいが操業度益と新製品で克服
--そうすると来期業績の展望は? 円高も進んでいますが。
ここ3年続いた2ケタの増収は難しいとしても、最低でも5%以上の増収増益は狙いたい。確かに円高は厳しい。当社の場合、対ドルで1円円高になると利益は16億円くらい目減りする。仮に来期の前提レートが1ドル=107円なら、前期より10円近い円高になりますから、それだけで100億円以上の減益要因になる。ただ、引き続き携帯電話市場が好調なら新工場の稼働率が上がり、操業度益が出てくる。これで円高要因は何とかカバーできると見ています。それと、新製品の比率アップです。現在32~33%の比率を早急に4割に引き上げ、付加価値を高める。特にコンデンサーなどの部品やモジュールの薄型化がテーマです。
--素材からの一貫生産も高収益の源泉ですが、生産面ではどう磨きをかけますか。
3年前に全社横断のものづくり組織として生産本部を設立し、生産革新活動を進めてきました。今年は品質革新活動も進め、両輪でものづくり力に磨きをかけたい。海外については、生産比率は低く、20%を切っています。新製品の比率向上を追求するかぎり、どうしても国内で最先端の技術を使って売り上げを拡大していくしかなく、比率はなかなか変わらない。ただ、ローエンドの労働集約型商品については海外生産を増やしていきたい。いちばん力を入れているのは中国ですが、無錫で積層コンデンサーの生産、深センで電源の組み立てをやっています。