ITバブル崩壊時と違って今の受注は”実需”です--村田恒夫 村田製作所社長
電子部品は日系企業が世界生産シェアの約半分を占め、圧倒的な競争優位にある。その代表商品であるチップ積層セラミックコンデンサーで世界シェア推定35%と首位に立つのが村田製作所だ。携帯電話や薄型テレビ、パソコンなど全世界のセットメーカーに部品を供給。売上高の4割を占めるコンデンサーのほか、携帯電話で特定の周波数帯域の電波だけ取り出す表面弾性波(SAW)フィルター、デジタルカメラの手ブレ補正をするジャイロセンサー、近距離無線通信用のブルートゥースモジュールなど、トップシェア商品が目白押しだ。売り上げの9割の製品がシェア1位か2位という理想的な勝ち組経営である。
村田恒夫社長は2006年に他界した創業者の三男。業績絶好調で大増産が続く昨年6月に、長兄の泰隆氏(現会長)からバトンを受け取った。2015年度売上高1兆円を目標に、ベンチャー精神の復活と成長加速を経営課題に掲げている。
--経済環境が激変していますが、影響は出ていますか。コンデンサー業界では一部、業績下方修正の動きもあります。
目立った影響は出ていません。今年に入って一部、中華圏でパソコンが低調だとか、薄型テレビでも大型サイズがあまり売れなかったという話は聞きますが、他社が言うほどの落ち込みはない。今年1月の受注も前年同期比で数%上回っている。
当社の場合、携帯電話など通信機器向けが全体の売り上げの4割と多く、AV機器が15%、パソコン関連が20%程度という構成です。そうした客先の分布の違いもあるのではないか。米国の消費動向が落ちても、携帯電話はBRICs向けが伸びている。BRICsの消費にまでサブプライムの影響は出ていないので、主力のコンデンサーはじめ全体的に堅調に推移すると見ています。
--単価の動きはどうですか。
価格的には予想していたより少し先行して下がっている気がします。当社はここ2年、コンデンサー等の増産のため年間1000億円以上という過去最高の設備投資をしてきた。今春には他社の増産体制も立ち上がってくるので、来期に向けた受注分の値下げが早めに出てきた感じはします。一方で、薄型テレビが北京五輪に向けてまだまだ増産されると見ているので、今までのようなタイト感はないにしてもダブつくという状況にはならないでしょう。