野中:これは一例ですが、大企業だからこそ、中小企業に学ぶべきことがたくさんあるはずなんです。大企業の人がMBAを勉強する暇があったら、優れた中小企業で働かせてもらったほうがよほど身になる。
遠藤:中小企業大学校が日本のMBA機関になるべきかもしれませんね(笑)。
野中:その発想はいいですね。
企業は「体格」より「体質」が重要
遠藤:つまり、中小企業大学校に大企業のさまざまなコンセプトを入れてはいけないんですよ。逆に中小企業大学校のカリキュラムを概念化して大企業に持ち込むことを考えるべきです。中小企業が日本経済を支え、それこそ「知識創造」を日々行っているわけです。
野中:そのとおり、これは元気が出る話ですね。
遠藤:世の中に漂っている「大企業は中小企業よりも上だ」という雰囲気が間違っています。大きさという企業の「体格」は大事だけれども、それよりも重要なのは、「体質」でしょう。「体格」がいくら立派でも「体質」が悪かったら、すぐに病気にかかってしまう。
野中:「体質のいい中小企業」は、「体格だけ大きい大企業」より上でしょう。
遠藤:そのとおりです。私はその体質を決めるのが「現場力」であり、「知識創造」だと思っています。中堅・中小企業だからこそ「知識創造理論」を学び、実践し、「体質」磨きを続ける必要があります。その意味では、野中先生が中小企業大学校の総長になられたというのは実に喜ばしい。日本の未来を変える話だと思います。
(構成:荻野進介)
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のなか いくじろう / Ikujiro Nonaka
1935年東京都生まれ。58年早稲田大学政治経済学部卒業。富士電機製造勤務の後、カリフォルニア大学(バークレー校)経営大学院にてPh.D.取得。南山大学、防衛大学校、一橋大学、北陸先端科学技術大学院大学各教授を歴任。日本学士院会員。知識創造理論を世界に広めたナレッジマネジメントの権威で、海外での講演多数。主な著作に『知識創造企業』(共著、東洋経済新報社)、『失敗の本質』(共著、ダイヤモンド社)などがある
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えんどう いさお / Isao Endo
早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機、複数の外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。2005年から2016年まで早稲田大学ビジネススクール教授を務めた。
2020年6月末にローランド・ベルガー日本法人会長を退任。7月より「無所属」の独立コンサルタントとして活動。多くの企業のアドバイザー、経営顧問を務め、次世代リーダー育成の企業研修にも携わっている。良品計画やSOMPOホールディングス等の社外取締役を務める。
『現場力を鍛える』『見える化』『現場論』『生きている会社、死んでいる会社』『戦略コンサルタント 仕事の本質と全技法』(以上、東洋経済新報社)などべストセラー著書多数。