日本にある深刻な「デジタルデバイド」の実態

菅政権「デジタル政策」根本的に欠けている視点

この店はここから、ステイホームを強いられた若い既婚者層が、テレビで映画を見ながらビールを楽しみたがっているのだと分析した。店は、おむつの隣にビールを置くだけで売り上げを上昇させた。「ビッグデータ」がなければ、このパターンが発見されることはなかっただろう。

ICTは、さまざまな方法で売り上げを向上させることができる。家具小売業者のニトリは、「拡張現実(AR)」と呼ばれるソフトウェアを使ってeコマース事業を拡大させた。顧客はスマートフォンアプリやノートパソコンを通して、サイズ、フィット感、外観が異なるさまざまなタイプの家具を体験してみることができるのだ。新型コロナの影響でほかの小売業者の売り上げが壊滅的であった2020年春に、ニトリのオンライン収益は2019年に比べて40%増であった。

ICTは製品開発にも役立つ

ICTは既存製品の改善にも有効だ。アメリカの貨物運送会社UPSは、小包を配送するすべてのトラックに、温度や圧力など、部分的破損の前に典型的に見られる状況をモニタリングするために「ビッグデータ」を使ったセンサーを搭載している。これにより、小包で埋め尽くされたトラック1台が破損するという高額な代償を避けることができる。

日産は、これと似たセンサーを「リーフ」モデルに搭載しており、将来的にはこのようなモニタリングシステムがすべての自動車に搭載されることになる。すでに自動車コストの10%はソフトウェア関連であり、この割合はこの先数年で30%に達しようとしている。これはつまり、自動車整備士はICTのスキルを身につけなければならないことを意味する。

ICTはまた、新製品の創出にも寄与できる。P&Gは、ビッグデータを利用し、家庭で使用する洗濯用洗剤の最大の問題が「適量を測ること」であることを発見した。これは従来の市場調査では取り上げられなかった点である。そこで2012年、同社は洗濯用洗剤カプセルを開発した。この新機軸は他社からも追随され、こうしたカプセルが今や洗濯用製品の急成長部門となっている。

大企業と中小企業間の「デジタルデバイド(情報格差)」は、日本の成長力を阻んでいる。経済産業省が中小企業にICT投資をしていない理由を聞いたところ、「ICTを導入できる人材が不足している」との回答が43%と最も多く、次いで「導入効果が明確でない、または十分でない」が40%と続いている。

最近では、機器もソフトウェアもそれほど高価ではなく、コストがかかるのは、中小企業に最適なソフトウェアを選び、それを使ってビジネスを構築する方法を教えてくれる技術者、あるいは民間のコンサルタントを雇うことだ。

実際には、大企業の多くも、コスト削減にこだわりすぎているがために、その可能性の最大化に向けたITの使用に失敗している。コスト削減は、ボトムライン、すなわち利益を改善することはできるが、トップライン、すなわち売り上げを改善することはできない。

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