【産業天気図・工作機械】アジア活況で最悪期脱し「曇り」へ、新興国現地需要の開拓が中期のカギ
とはいえ07年に記録した過去最高額1兆5900億円に比べれば、なお半分程度の水準。製造業全般の設備稼働率が7~8割にとどまっている現状では、増産投資に踏み切る企業は自ずと限られる。主要4市場(国内、北米、欧州、アジア)のうち、アジアのみが中国(2月受注額165億円、全体の25%)を中心に急伸している偏った戻り方も、上海万博(今年5~10月)後の投資一服等を懸念させずにはおかない。まして各種エコ減税で需要を先食いしている国内に、頼もしい牽引役は見当たらない。
これらの不透明要因も踏まえ、「会社四季報」春号は、新春号に続き慎重予想を基本に置いた。だが、大規模人員削減を行った森精機製作所<6141>やソディック<6143>、米国ボーイング最新鋭機787の恩恵を受けそうな牧野フライス製作所<6135>など一部の社については来11年3月期の収益予想を引き上げている。
中期的な業界展望についても、やはり外需がカギになる。内需回復が基本的に期待出来ない中、工作機械メーカーは日系製造業の海外投資需要だけでなく、新興国の現地製造業の需要も掘り起こす必要がある。一方でこういった新興国開拓には現地の工作機械メーカーという強敵も存在している。日工会と米国ガードナー社の調査によれば、日本は09年、1982年以来27年間保持していた工作機械生産額世界一の座を中国に明け渡し、ドイツにも抜かれて3位に転落した。技術面でも、韓国、台湾勢が急ピッチでキャッチアップしている。
こういった競争環境を制し、仮に受注の外需比率が100%になっても生き残れる企業になれるかが、中期の生存競争を決しそうだ。
(内田 史信)
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