葛飾区が熱望「貨物線旅客化」は現実的なのか 「新金貨物線」交差する国道の立体化がカギに

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

周辺を観察したところ、渋滞を避けるために両隣の踏切へ迂回するクルマも見受けられる。これは「新宿新道踏切」が東京都の「踏切対策基本方針(2004年)」で都内394箇所の「重点対策踏切」の1つに選ばれ、放射13号、補助276号など迂回路の整備が行われたからだ。しかし、それでも国道6号の渋滞は解消されていない。立体交差化すれば周辺に流れる交通量が減り、踏切事故リスクは下がる。

実は国土交通省関東地方整備局は国道6号の改良事業を進めている。「新宿拡幅」と呼ばれており、葛飾区新宿2丁目から葛飾区金町6丁目まで延長約2.1kmの拡幅・立体事業だ。このうち金町地区1.2kmは1995年に立体交差と拡幅工事が終わった。新宿地区の0.9kmは新金貨物線を高架化して潜り抜けたのち、補助276号線を高架でまたぐ。こちらは1983年に事業化され、2015年に工事着手している。

国道6号「新宿拡幅」の断面図(画像:国土交通省関東地方整備局資料より)

ただし新金貨物線の高架化のメドが立たない。2014年の進捗資料によると、2000~2001年に「JR新金線の立体交差化」に伴う調査設計について協議が完了した。しかし、JR東日本としては旅客路線の踏切整備を先行しているため、貨物線は後回しでいつになるかわからない。このほか、拡幅区間の取得予定地にマンションや商業施設が多く、未着手部分が多い。事業終了予定は2022年から2025年に延びた。

新金線高架化か国道立体化か

新金貨物線の高架化は踏切解消も狙った計画だと思われる。しかし、メドが立たないならば、国道6号の高架区間を延ばし、新金貨物線をまたいでもよさそうな気がする。単独立体交差で渋滞が改善できるなら、新金貨物線を複線化して旅客列車を運行できる。単線並列として旅客用線路を増設し、LRVを走らせてもよかろう。手っ取り早く舗装路を作り、BRT(バス高速輸送システム)を走らせてもいい。

JR東日本が旅客化された新金貨物線を活用し、総武本線と常磐線を結ぶ列車を走らせる。その可能性を担保するなら普通鉄道による複線化となる。しかし、AGTを選択肢に挙げるならば、BRT専用道を整備して連節バスを走らせたほうが費用面でも利点が大きいし、災害時に救急車も走行できる。

関東地方整備局の計画通りとするなら、葛飾区は新金貨物線の高架化を働きかける必要がある。新金貨物線旅客化を先行させたいなら、国道6号の整備計画を見直し、新金貨物線をまたいでもらう。このどちらかを決めないままで旅客線化を検討しても時期尚早と思われる。

杉山 淳一 フリーライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

すぎやま じゅんいち / Junichi Sugiyama

東京都生まれ。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社でパソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当したのち、1996年にフリーライターとなる。IT、PCゲーム、Eスポーツ、フリーウェア、ゲームアプリなどの分野を渡り歩き、現在は鉄道分野を主に執筆。鉄道趣味歴40年超。全国の鉄道路線完乗を目指してコツコツと旅を重ねている。鉄旅オブザイヤー選考委員。基本的に、列車に乗ってぼーっとしているオッサンでございます。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事