リモート営業「ベルフェイス」が狙う次の鉱脈 「電話の代替」に終わらないデータ事業の勝算
大企業向けの導入を進める中で同社にとって重要になるのは、組織体制の強化だ。ベルフェイスは創業以来、複数のベンチャーキャピタル(VC)から累計63.6億円の資金調達を行っている。2020年2月に完了した大型調達、52億円の使い道として示しているのは、採用とサービス開発への投資だ。
採用については、2020年1月時点で100人程度だった社員数が12月時点では330人を超え、組織の規模は3倍以上に膨らんだ。法人向けSaaSプロダクトを成長させたいという動機を持った大手IT企業からの転職組も多いという。
ただ、急激な拡大は課題も突き付けた。「リモート営業の拡大というものすごい追い風とともに、この1年は急拡大する組織のマネジメントという向かい風にもさらされた」(中島代表)。実際、1人の管理職がマネジメントするチームの人員が30人規模に膨らみ、1人ひとりのフォローが追いつかなかったり、中島代表と現場を結ぶ経営幹部が足りずに業務負荷が集中したりといった問題も起こった。
そこで現場レベルの人材に加え、経営幹部人材の拡充も進めている。2020年12月には、ディー・エヌ・エーの技術役員としても活躍した山口徹氏をCTO(最高技術責任者)として招聘した。
次に狙うのは「海外展開」
ベルフェイスのサービスは国内だけに特化したものではない。国内攻略の先には海外展開の野望も持つ。海外にも当然、日本の営業マンのようにセールスに従事している人を通じて商材を売る習慣はある。加えてコロナ禍の中、対面営業ではなく電話とオンラインを組み合わせた提案にシフトするニーズも強まっているだろう。
「海外展開においても、電話を活用して営業するというシンプルな強みは生きる。『まずは国内で導入企業を拡大して足元を固めましょう』という社内の意見との戦いになるが、(早期に海外展開を実現し)世界に通用するプロダクトに成長させたい」(中島代表)
SaaSのビジネスモデルを展開するベンチャーは通常、一定数まで顧客を積み上げる成長段階では先行投資がかさむ。VCなどから大型の資金調達を進め、赤字のまま株式上場を果たす事例が日本でも増えている。例えば会計ソフトなどを展開するマネーフォワード(2017年9月上場)やフリー(2019年12月上場)などだ。
だが、ベルフェイスは上場にこだわらないという。「あくまでたくさんある選択肢の1つと考えている。(世界中に営業網を持つような)巨大なテック企業の傘下に入ることもありうる。私たちが世界展開を実現するうえで最適な道を選びたい」(中島代表)。
コロナ禍の中、リモート営業に特化したサービスで躍進を遂げたベルフェイス。世界に通用するベンチャーとしての戦いは始まったばかりだ。
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