「限定的な自粛」の効果が著しく薄い根本理由 変異種の感染拡大ペースについていけていない
環境が同じだったとしても、従来のものより多くの人数に感染するようだ。
科学者らは当初、従来のウイルスに対し感染力が最大で70%高まったと試算していたが、数理モデルを用いた最近の研究では56%という数字がはじき出されている。全データの検証が完了した段階で、感染力の高まりは10〜20%程度という結論になる可能性もある、とシアトルにあるフレッド・ハッチンソンがん研究センターの進化生物学者トレバー・ベッドフォード氏は指摘する。
しかし同氏によれば、たとえ感染力が10〜20%高まっただけだとしても、この変異株はアメリカで急速に蔓延し、3月には支配的なウイルス株となっている公算が大きい。
これは数との闘いだ
この変異株では重症化率や致死率が高まったようには見えない。それでも、おそれなければならない理由がある。感染力の高い変異株は急速に広がり、感染者を急増させる。ゆえに死者数も増加する。単純な理屈だ。
「要するに数の問題だ」とラスムセン氏。「アメリカやイギリスのように医療が崩壊の危機に瀕している場所」では、その影響は何倍にも増幅されることになるという。
感染経路はこれまでと同じだ。混雑した屋内における大小の飛沫や空気中に浮遊するエアロゾルの微粒子を介して感染する。これはつまり、マスクを着用し、他者と過ごす時間を減らし、屋内換気を改善するといった従来の感染防止策が有効であることを意味する。こうした防止策は、ほかの変異種にも効果がある。
新たな変異株に感染すると、体内のウイルス量が高くなる可能性がある。イギリスの初期分析結果では、新たな変異株の感染者は従来のウイルス株の感染者に対し、喉と鼻のウイルス量が高くなる傾向のあることがわかっている。