「86/BRZ」はスポーツカー文化を復権できたか 購入者データで浮かび上がったユーザー心理

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「購入時重視項目」(複数選択方式)の結果から、ユーザーが86/BRZに何を求めていたかを確認する。注目すべきは、86とBRZユーザーで重視するポイントが違ったことだ。

BRZのほうが、「高速走行時の安定感」「ブレーキの効き」「コーナリングの安定感」といった走りに関する項目のスコアが軒並み高い。

初代レヴォーグ購入者に見た「スバリスト像」』でも見たように、スバルユーザーの特徴が表れている。「ボディカラー」のスコアの高さは、86では選べないスバルの人気色「WRブルー・パール」を指しているであろう。

スポーツカーといえば、MT/AT比率も気になるところだろう。86/BRZは6速ATと6速MTをラインナップするが、やはりMT比率が高く、5割を超えている。BRZでは、実に7割近くがMTだ。

しかし、「意外とATも多い」と見ることもできる。「スポーツカー=マニュアル車」と選ぶユーザーが多い一方で、そうした概念にとらわれない幅広いユーザーを取り込めているのかもしれない。

スポーツカー好きの育成はできた

購入者の年齢データから、86/BRZを通してスポーツカーを購入し、そのよさを体験している若年層が多いことがわかったが、彼ら彼女らは次のクルマ購入をどのように考えているのだろうか。

「買い替える際は1クラス上の車にステップアップしたい」に対する回答を見てみると、86ユーザーは「あてはまる」の割合が高い。

トヨタには86の上位カテゴリーに「スープラ」があるので、買い替え車種をイメージしやすい。86を通してスポーツカー好きな顧客を育成できているといえそうだ。

86/BRZは、スポーツカー文化を復権させたのか。かつてのスポーツカー全盛期のような隆盛こそ見られないが、中高年のリターンユーザーを掘り起こし、若年層ユーザーの開拓にも成功した。そういった意味では「成功した」といえるだろう。しかし、その本当の答えは、第2世代モデルにかかっているのかもしれない。

三浦 太郎 インテージ シニア・リサーチャー

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みうら たろう / Taro Miura

北海道大学大学院理学院卒業後、インテージ入社。自動車業界におけるマーケティング課題の解決を専門とし、国内最大規模の自動車に関するパネル調査「Car-kit®」の企画~運用全般に従事。

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