「社員流出に苦しむ会社」「食い止める会社」の差 近い将来、日本が「大転職時代」を迎える理由
なお、最近話題になっているジョブ型雇用への転換が進めば、転職が飛躍的に増えるでしょう。これまでの職務を限定しないメンバーシップ型雇用(=就社)と違って、職務を明確に定義するジョブ型雇用(=就職)になれば、転職市場で仕事と人材のマッチングが極めて容易になるからです。
こうした近年の諸々の変化を考えると、本来なら2020年に大転職時代が幕を開けてもおかしくありませんでした。ところが、新型コロナウイルスで人の移動が制限され、企業は採用活動、従業員は転職活動を十分にできませんでした。多くの企業は、コロナによる業績悪化で人件費を抑制することを迫られ、中途採用を抑制しました。昨年の転職市場は、さすがに近年になく低調でした。
逆に、今後コロナが終息すれば、堰を切ったように転職ラッシュが始まることでしょう。いま、多くの企業と従業員が、コロナ終息後の大転職時代の幕開けに備えて、手ぐすねを引いています。
転職を希望する会社員の本音
「当社は、元々機械系の技術者が多く、電気系の技術者の採用が課題でした。そこへAIへのニーズが高まり、技術者不足が深刻な問題になっています。2020年は中途採用を中断したので、状況が落ち着いたら、思い切って中途採用に取り組みます。ただ、人を増やすだけではいけないので、早期退職の募集をセットで進めるべきどうか、現在検討中です」(エンジニアリング会社の人事部長)
「当社でも昨年、早期退職の募集がありました。45歳以上が対象で、33歳の私は対象外でしたが、応募したかったですね。業績悪化に対応して人を減らすだけで、将来の展望を示さない会社には、心底失望しています。公共分野のソリューション営業には自信があるので、コロナが終息したら、自分のスキルを生かせる会社に転職し、新たな挑戦をしたいと思っています」(電機メーカーの営業担当者)
近い将来、アメリカやシンガポールのように、世代を問わず数年おきに転職する社会になるのでしょうか。転職が今より倍増するくらいで留まるでしょうか。程度はわかりませんが、確実にビジネス社会が大きく変わりそうです。
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