変異種出現で変わった「コロナ収束のシナリオ」 今のワクチン接種ペースでは対抗できない

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一方、ワクチン接種を毎週200万人にまで増やせば、集中治療室にかかる最大負荷は下げられる。しかし、イギリスが果たしてワクチン接種を10倍に増やせるのかどうかは不明だ。

アメリカ疾病対策センター(CDC)によると、12月22日時点で、この変異種はまだアメリカで検出されていない。が、「アメリカでは検体のごく一部でしかゲノム解析が行われていないことを考えると、変異種は検出されることなく、すでにアメリカに到達した可能性がある」とCDCは警告している。

アメリカのワクチン接種は期待されたペースに達していない。イギリスで確認された変異種がアメリカでも広まっているとすれば、こうした接種の遅れが問題となる恐れがある。「あらゆる感染防止策を、一刻も早く動員できるようにしておかなくてはならない」とハナージ氏は指摘する。

全面的な規制強化が避けられない

もちろん、数理モデルは一定の前提に基づくものであり、現実が前提どおりに推移するとは限らない。この点については、デービス氏の研究チームも注意を促している。

例えば、入院患者に対する治療法が改善するにつれて、新型コロナ感染症の致死率は今後も下がっていく可能性がある。新たな変異種は子どもへの感染力も高くなっている可能性があるが、これについては不明点も多く、どれくらい感染力が高まったのかも明確になっていない。その意味で、今回の研究には限界もある。

しかし、それでもデービス氏の研究チームは論文でこう結論づけている。「現在進んでいる新型コロナの感染を十分に低減するため、新たにどのような手法が必要になるかを至急検討しなくてはならない」。

「残念ながら、またしても筋書きが変わったということだ」。今回の研究に関与していない、ノースイースタン大学ネットワークサイエンス研究所のアレッサンドロ・ベスピニャーニ所長は、新たな試算についてこう話す。

「ワクチンができて喜んでいたら、今度は新たな研究で疫学的な状況が変わる可能性のあることがわかった。これからの数カ月は、想定していたのよりもはるかに複雑で危険な状況に対処しなければならなくなる恐れがある。新たな変異種の感染力が高いことを示す証拠は積み上がってきている。感染拡大をコントロールするには、以前にも増して多大な努力が求められることになるだろう」(ベスピニャーニ氏)

(執筆:Carl Zimmer記者、Benedict Carey記者)
(C)2021 The New York Times News Services

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