ソニー復活? 3つの挑戦--知られざるビジネス変革[上]
3Dのセカンドウエーブが到来した--。3月中旬、米国のメディアはそう華々しく報じた。ジェームズ・キャメロン監督の『アバター』で始まった2009年末からの一連の3D映画ブームに続き、パナソニックと韓国サムスン電子の2社が3D対応の薄型テレビを米国で相次ぎ発売したからだ。
家電量販最大手、ベスト・バイのロサンゼルス郊外店。前日に入荷されたばかりというサムスンの3Dテレビは、店頭ディスプレーの準備も整わずひっそりと店の隅に置かれただけ。
にもかかわらず、ホワイトカラー風の男性客が目ざとく見つけ、「メガネは付いているのか、ブルーレイ再生機はマストか」などと店員を質問攻めにしていた。「もっと大きい店舗に行けば、パナソニックの製品もある。今年は間違いなく3Dがブームになる。エキサイティングだね」と店員も興奮ぎみだ。
3Dをめぐって熱を帯びる米国の販売最前線。しかし、そこにはまだソニーの姿はない。サムスンとパナソニックが3Dテレビを発売する数日前、ソニーは東京でやっと3Dテレビの製品発表会を行ったばかりで、実際の発売は6月中旬。
オフィシャルパートナーを務めるFIFAワールド杯の開催に合わせた時期で、試合の3D放映を販売立ち上げの起爆剤にしようともくろむ。
先行2社に対し、約3カ月遅れての登場。しかしテレビ事業を統括する石田佳久・業務執行役員は「この3カ月の遅れが事業面の痛手になるとはまったく思わない」と言い切る。この強い自信は、いったいどこから来るのか。
何でもあるのに稼げなかった
前09年3月期、過去最悪の営業赤字を計上したソニー。今期はテレビ工場など国内外10拠点の閉鎖、非正規を含む約2万人の人員削減を断行したことで、「来期は営業益2000億円台に回復することがほぼ確実だろう。経営課題はすでに、足元の赤字脱却ではなく中期の成長戦略に移っている」(野村証券金融経済研究所の片山栄一アナリスト)。