「トランプ党」と化したアメリカ共和党の今後 「小さな政府・自由貿易」をポピュリズムが駆逐
この反エスタブリッシュメントを掲げるポピュリズムを後押ししたのが、経済構造の変化、人口動態、そしてメディアだ。
2000年代、世界同時多発テロ、リーマンショック、アメリカの経済構造の変化に伴う製造業雇用の減少などの経済悪化が、ポピュリズムの感情を強めた。
人口動態の変化もポピュリズムの高まりに影響している。アメリカでは現在、白人(ヒスパニックを除く、以下同じ)が約6割を占める多数派である。だが、2045年には白人の占める割合は5割を切る見通しだ。非白人が白人を上回ることについて、ピュー研究所の世論調査(2018年12月)では白人の46%がアメリカの慣習・価値観を蝕むと答えている。このように一部の白人が止まらない社会の変化に危機感を抱いていることが、ポピュリズムに共鳴する背景であろう。
メディアによる煽りとSNSによる拡散
さらには、従来は異端とみられてきたこのような考え方を煽っているのがアメリカのメディアである。トランプ氏を強固に支持するニュースマックスやワン・アメリカ・ニュース(OAN)といった新興右派放送局などは、選挙不正に関わる陰謀説を訴えて、視聴者を急増させている。収益面からもますます偏った報道を増やすインセンティブが働いている。つまり、政治報道は事実を伝えるニュースではなくエンターテインメントビジネスと化しているのだ。
陰謀説の報道はいずれ左派でも起こりうるであろうが、現在は主に右派の保守系メディアで見られる。そして、これらを視聴する有権者が政治家に圧力をかけることで政治も動かされるといった現象が起きつつある。つまり、メディア各社が利益を追求することで行きすぎた資本主義がアメリカの民主主義を蝕んでいる。さらにポピュリズムを後押ししているのがソーシャルネットワークによる拡散だ。
上述のとおり、トランプ氏がアメリカのポピュリズムの原因なのではない。だが、トランプ政権は党内で異端であったポピュリズムを一気に党の主軸に格上げした。そのため、今後も長期にわたり党内でトランピズムは勢力を維持することとなる。仮に共和党指導部(エスタブリッシュメント)が党をポピュリズムから距離を置こうと思っても、当面は困難であろう。
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