「トランプ党」と化したアメリカ共和党の今後 「小さな政府・自由貿易」をポピュリズムが駆逐

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2016年大統領選で繰り広げられた共和党の内戦では、反エスタブリッシュメントのトランプ氏の勝利によってエスタブリッシュメントが敗北したと見られている。今日、「共和党支持者はカントリークラブ(富裕層)からカントリー(田舎)に移った」と政治専門家は指摘している。

都市部や郊外などに在住し、エスタブリッシュメントを支持する大卒白人は、トランプ政権への批判から共和党を去り民主党支持に切り替わり、その結果、支持基盤がより田舎に移った現象を指す。エスタブリッシュメントが影響力を失ったことで、今日の共和党の支持基盤はポピュリストといえよう。

アメリカのメディアは、共和党をトランプ大統領個人のカリスマによって成り立っているカルトと描写することもある。カルトの場合、指導者が去ると崩壊することが多々ある。過去、ポピュリストの政治家でもそのようなことが頻繁にみられた。だが、反エスタブリッシュメント感情などポピュリズム(通称:トランピズム)は社会的ムーブメントだ。トランピズムの今後を占うには、これまでの共和党の歴史を振り返る必要があろう。

ロナルド・レーガン時代から始まったポピュリズム

このポピュリズムのルーツは少なくとも約40年前までさかのぼることができる。1980年、ロナルド・レーガン大統領が初当選した際、ラストベルト地域在住の白人労働者階級の民主党支持者が共和党に鞍替えし、そのまま共和党支持に居残ったのが、レーガンデモクラットだ。当時、彼らは民主党の移民政策などに反発して、共和党にシフトした。だが、レーガンデモクラットは共和党の推進する小さな政府や自由貿易など経済政策には不満を抱いていた。

1992年大統領選では反エスタブリッシュメントや北米自由貿易協定(NAFTA)反対などを掲げた第3党のロス・ペロー候補が約19%もの票を獲得した。ペロー氏を支えたのがレーガンデモクラットをはじめとする白人労働者階級であった。この層は、2008年大統領選では共和党副大統領候補で反エスタブリッシュメントのサラ・ペイリン氏を、熱狂的に支持した。

いずれの候補の熱気も当時、打ち上げ花火のように一瞬の輝きで消え去ったように見えた。だが、こうした感情が多くの国民に残存していたことが、2016年大統領選でトランプ氏が当選したことにより、判明したのである。

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