2021年も米国株が日本株より上昇しそうな理由 なぜコロナがかなり深刻なのに買われるのか

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一方、ホワイトハウスと議会は、個人への小切手送付を含めた複数の仕組みを早急に整えて、家計所得を大規模に支える対応を繰り出した。連邦政府の財政赤字は6月時点で対GDP比約15%となり、わずか3カ月の短期間で対GDP比10%財政赤字が拡大した。この大規模な財政支出が戦後最大規模の経済ショックをかなり和らげた。

日本でも4月の緊急事態宣言に伴い、計57兆円(対GDP比11%)規模の2度の補正予算が策定された。アメリカ同様に補正予算が短期間で歳出されれば、日本経済はアメリカ同様に回復していただろう。日本では財政収支のデータが毎月発表されていないので推計するしかないのだが、実際にこれまでに歳出が執行されたのは、補正予算のうち約半分にとどまると筆者は試算している。

日本のコロナ感染者への対応は不十分なまま

さらに、年末に日米で決定された追加の財政政策においても、同様の違いが見られる。アメリカでは協議が難航していた追加財政政策は、結局9000億ドル規模(対GDP比約4%)で12月21日に上下院で可決された。

同月末で切れる失業保険の上乗せ、雇用を維持する中小企業への支援金、さらに中所得者への追加の現金給付600ドルなど、これらの家計所得を支えるプランは年明け以降すぐに歳出される見通しである。コロナ後の経済復調は、先進国の中でアメリカが最も順調だが、経済回復を後押しする政治対応が実現したと評価できる。

一方、日本では、菅政権によって第3次補正予算が策定されたが、アメリカのように幅広い家計への所得支援メニューは含まれていない。今後年度末にかけて歳出される可能性がある政策は、店舗への休業補償、医療機関への支援、GoToトラベル延長などで、これらはせいぜい約5兆円(対GDP比1%)程度と見込まれ、景気停滞が長期化する備えとしては不十分だろう。

そもそも、日本の医療資源全体では余剰はあるのだが、いっぽうでコロナ感染者への対応が脆弱なままであるため、感染の拡大が経済活動のネックになっている。現在の日本では総需要刺激政策を繰り出しても効果は限られるので、最優先に取り組むべきは、コロナ感染者拡大に対応できる医療体制の拡充であるが、依然としてその対応が実現しているようにはみえない。

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