コロナで魅力度が一気にアップした「5つの街」 独断!2021年版「ゆく街・くる街」はこうなった

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しかも、本好きであるのはもちろんとして、イラストレーター、画家、役者、ジャグラー、プログラマーとさまざまな業種、年齢、性別の人が集まっており、店番をしつつ、横の繋がりも生まれている。

さらに店内に置かれた機械を使ってイラストを描いて印刷、製本したカレンダーその他を販売することも。よくわからないうちに本屋を拠点に街に新しい文化拠点が生まれたわけである。最近は地方からわざわざ泊りがけで来る人もおり、この活動は今後、街のイメージを変えるような化け方をしそうである。

生まれ変わる「長屋」の街

京島(東京)

長らく続いて来た地道な活動がコロナ禍の制約の中で大きく動き出した街がある。墨田区の京島を中心にした界隈である。同エリアは関東大震災後に田んぼと養魚場が急ピッチで宅地化された地域で、その後、下町としては奇跡的に戦災を免れたため、当時の長屋を含めた木造住宅が多く残されている。

そこに目を付けた建築や都市計画系の研究者などが1998年に「向島国際デザインワークショップ」を開催。以降延々と空き家のリノベーション、アーティストの移住、イベントの開催などが続いてきており、2020年秋には街の空き家や軒先などを舞台にした「すみだ向島EXPO2020」(以降EXPO)が約1カ月間開催された。

中心となったのは2008年春に谷中から引っ越してきた後藤大輝氏。谷中よりも古い長屋や工場が残されていると聞き、そこを舞台に映画をというつもりだったというが、カフェとして営業してくれる人を探すうちに空き家を改修し、活用の道へ。現在までに15件ほどを手がけた。

後藤氏がEXPOを手がけるようになったのは2018年春。京島の名所でもあった30軒長屋が取り壊されることになり、危機感を抱いたのがきっかけだ。京島の長屋を考える82日間連続イベントを行い、それがEXPOに発展した。

すみだ向島EXPO2020は町の中にある建物、空き家などを利用して開催された(写真:筆者撮影)

2020年はコロナ禍で実施を迷うところもあったが、開催期間中には700人弱の人が3300円(一般大人)の有料チケットを買って参加、関連イベントや、ワークショップ参加した人は約3000人に上った。それ以上に驚くのはこのイベントをきっかけに空き家の活用が一気に進んだことだ。

「明治通り沿いの5軒空きのあった7軒長屋のうちの3軒がギャラリーやボードゲームカフェ、古本屋として活用されることになり、EXPO時に受付となっていた元米屋にはネパール料理店がオープン予定です。商店街にある閉店して売却されようとしていたパン屋は新しいオーナーの手に渡って実験オープン。ギャラリー、アートスペースに生まれ変わる空き家も2軒あり、再生を意図して売買の話が進んでいる建物もあります」と後藤氏は話す。EXPOは空き家活用博覧会でもあったわけだ。

さらにイベントの反省会では地元からもっと関わりたいという声が出た。長年活動が続いて来ただけに、これまでも地元からは目に見える反対の声はなく、承認されているとは感じていたが、逆に一緒にやりたいという希望である。外から来た人たちが20年間積み上げてきた動きに地元の人たちが加わるとなれば鬼に金棒。歩いて楽しい、会話のある街がさらに面白くなりそうである。 

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