過去最高の活況「ふるさと納税」の新たな課題 最新!実質住民税「流出額」ランキング
川崎市も黙って見過ごしているわけではない。自らもふるさと納税を集めるべく、サッカー・J1の川崎フロンターレのユニフォームや、コロナ禍で需要が落ちこんだ川崎日航ホテルのおせち料理などを返礼品として打ち出している。
啓発活動にも力を入れる。市内の中学校の社会科の副教材では1ページを割き、ふるさと納税で流出した財源がごみ収集の費用で何万世帯分にあたるか、保育園の運営費用で園児何人分に相当するかを教えているという。
東京23区も高水準の流出が続く。2020年はコロナの影響で確定申告の期限が1カ月延長されたことで、総務省の「住民税控除額の実績等」に反映されていない流出分がある。各区の税務担当者に確認したところ、今年度の流出額は世田谷区では約56億円、港区では約37億円と高止まりしている。
世田谷区もふるさと納税を獲得するために、PCR検査体制の拡充や児童養護施設を退所した若者への奨学金などを打ち出して寄付を募集している。「コロナ対策関連では6000万円ほど寄付が集まっている」(世田谷区財政担当部副参事の寺西直樹氏)と、一定の効果があるようだ。
多額の住民税が流出しながら、国からの補填も受けられない東京23区は2020年8月に「「ふるさと納税制度」に対する特別区緊急共同声明」を発表した。住民税の20%まで税額控除が受けられる仕組みを、以前のように住民税の10%に戻すことや、地方交付税を受けていない自治体に対しても、ふるさと納税による減収分を国が補填することを求めている。
自治体に入るのは寄付額の半分
都市部の自治体が財源流出に苦しむ一方で、その流出金額が地方の自治体にそのまま入るかというと、そうではない。
2019年の法改正により、自治体がふるさと納税の募集にかけられる経費は寄付金額の5割までと定められた。しかし裏を返せば、現在でも寄付金額の半分程度しか寄付先の自治体には入らないことになる。
経費の多くを占めるのは返礼品だ。各自治体は地元の産業を支援する目的も兼ねて返礼品を設けている。この返礼品のほかに大きなウェイトを占める経費が、ポータルサイトへの手数料といういびつな構造になっている。
最大手のふるさとチョイスは手数料率を一律5%と開示しているが、ほかの大手事業者は非開示でブラックボックス。大手の「ふるなび」については、「オプションをつけると20%近い手数料率になる」(ある関係者)とも言われている。
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