過去最高の活況「ふるさと納税」の新たな課題 最新!実質住民税「流出額」ランキング
外食向けの需要激減で苦しむ生産者や、医療機関を支援するためにふるさと納税がうまく活用された一方で、多くの課題も残されている。その1つが、都市部の自治体で多くの住民税が「流出」していることだ。
ふるさと納税では自己負担の2000円を除き、一定の上限額(住民税の20%)までは、寄付した金額の全額が翌年の住民税から控除される。たとえば住民税を年間50万円納める人であれば、約10万円までの寄付は翌年の住民税の減額という形でほぼ全額が返ってくる。
そのため寄付者が居住する自治体では、本来入るはずの住民税が失われることになる。人口が多く、所得層の高い都市部の自治体ではとくにその影響が大きい。コロナ禍で法人や個人の収入が減ると、税収も減少することが予想される。都市部の自治体の財政にとってはダブルパンチである。
実質流出額トップは前年度に続き川崎市
総務省が2020年8月に公表した統計資料によれば、2020年度に最も住民税控除額が大きかった市区町村は138.5億円の横浜市。以下、名古屋市、大阪市など大都市が並ぶ。だが、これらの市は地方交付税による補填が受けられるため、実質の流出額はその4分の1にとどまる。
横浜市をはじめ多くの自治体が補填を受ける一方、独自の税収で財政運営ができる東京23区や川崎市などは地方交付税を受けておらず、ふるさと納税で多額の住民税が流出しても補填がない。
そこで地方交付税による補填を考慮した「実質流出額」を独自算出した。
全国で最も多く住民税が流出した川崎市は、前年度に続き過去最多を更新する61億円が失われた。川崎市財政部資金課の土浜義貴課長は「特に2020年はコロナ対策の支出も膨らんでいることもあり、住民税の流出は痛手」と話す。川崎市では市の借金返済のための費用をプールした減債基金から、住民税の減収分を補填する状況が続く。
2020年はコロナ対応で、市の経済を活性化するための対策費用も減債基金から支出していることもあり、例年よりも厳しい状況だ。「今すぐ資金ショートを起こすことはないが、漫然と支出を続けてしまえば、減債基金は10年で底をつきかねない」(土浜氏)と危機感をあらわにする。
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