2021年「大変革期」が始まる鉄道ビジネスの挑戦 終電繰り上げや時間帯別運賃の検討、どう進む

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JR西日本がコロナ前に動き出したことからもわかるとおり、鉄道各社が終電繰り上げに踏み切る理由は、コロナ感染拡大による利用者の減少だけではない。むしろ、深夜時間帯における線路メンテナンス作業の人材確保こそが最大の理由だ。

2019年11月、JR東日本は高輪ゲートウェイ駅開業に向けて、山手線を止めて線路の切り替え工事を行った。だが、このように電車の運行を止めて工事を行うことはまれで、通常の線路メンテナンス作業は列車が走らない終電から始発までの時間帯に行われる。

高輪ゲートウェイ駅開業に向け、山手線を止めて行われた線路の切り替え工事=2019年11月(撮影:大澤誠)

問題は作業時間が短いことだ。仮に終電が深夜0時半、始発が朝5時だとしても、メンテナンス作業時間を4時間半確保できるわけではない。作業員の安全確保のためにはまず終電後、メンテナンス作業を行う区間に電車が走っていないことを確認してから、列車の進入を防ぐ「線路閉鎖」という手続きを行うほか、作業に使う大型重機を最寄りの車両基地などから移動させることもある。

作業終了後は、再び重機を移動させ、線路上に障害物が落ちていないかなどの安全確認を実施してから線路閉鎖を解除、始発列車を待つ。

社会全体のあり方にも影響

こうした手順を踏むと、実際に作業を行える時間は2時間半程度しかないこともある。しかし、仮に終電が30分繰り上げられ、始発が30分繰り下げられれば、3時間半の作業時間が確保可能。つまり、1晩の作業量が4割も増えることになる。

JR東日本によれば、生産年齢人口の減少に伴い、線路メンテナンス作業員が今後10年で1〜2割減少することが見込まれる。1晩当たりの作業時間が増えれば作業員不足問題の解決につながるという意義は大きい。また、作業効率が改善されることでコスト削減効果も期待できるという。

ただ、終電時刻が早まることで、飲食店の閉店時間から深夜残業するビジネスパーソンの業務まで、その影響は広範に及ぶ。社会全体のあり方が大きく変わりそうだ。

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