2021年「大変革期」が始まる鉄道ビジネスの挑戦 終電繰り上げや時間帯別運賃の検討、どう進む

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JR東日本やJR西日本は変動運賃という形で運賃見直しに言及しているが、「運賃値上げも検討せざるをえない」(JR四国)、「運賃・料金改定に向けた制度研究や検討を進めている」(近畿日本鉄道)など、値上げを見据えた言及をしている鉄道会社もある。その意味では、変動運賃も時間帯別の運賃バランス次第では、鉄道会社にとって収入増、つまり実質値上げにつながる可能性がある。

コロナ禍がもたらした新しい生活様式としては、テレワークの広がりも挙げられる。昨年4〜5月の緊急事態宣言で在宅勤務の動きが進んだが、「出社しなくても仕事ができる」「電車通勤しなくて楽だ」と歓迎する声が相次いだ反面、「家人がいるのでテレビ会議ができない」「仕事とプライベートの切り分けが難しい」といったデメリットも挙がった。

「駅や車内でテレワーク」広がるか

そこで注目されるのが、テレワークオフィスでの勤務だ。JR東日本は首都圏の駅ナカなどで個人向けのブース型シェアオフィス「STATION BOOTH(ステーションブース)」を展開しているが、東急や東武鉄道のように郊外にシェアオフィスを設置する例も見られる。この動きが進めば、都心のオフィスに出社する代わりに、自宅最寄り駅近くのシェアオフィスに出向いて仕事をするというライフスタイルが可能になる。

東京駅にあるシェアオフィス「STATION DESK 東京丸の内」の内部。首都圏駅構内では個人用のブース型も増えている(撮影:梅谷秀司)

さらにJR東日本は駅ナカだけではなく、走行する東北新幹線の車両をテレワークオフィスとして使う構想を2020年12月に発表した。2月に実証実験として特定の列車の一部の車両を「リモートワーク推奨車両」として開放、通信ルーターなどを貸し出すほか、車内でのウェブ会議も実施可能とする。

今回の実証実験で得られる利用者の動向や課題を基に、さらに快適なテレワーク環境を提供できるよう検討するという。テレワークに適した新型車両の導入も視野の先にある。

新型コロナによって、鉄道のあり方が大きく変わろうとしている。利用者にとってそれをいかに便利で快適なものにするか、今年はその挑戦の1年である。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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