【産業天気図・自動車】トヨタの巨大リコールが世界市場の回復勢いを削ぐ恐れ、前半は「雨」必至

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 一方、中国に抜かれたとはいえ1台あたりの単価が高く、利益の源泉である北米。カナダ・中国を含めた09年市場は1260万台にまで縮小したが、10年は1400万台レベルまで回復すると見られる。

実に140万台超の「増分」を誰が取るか。ゼネラル・モーターズ(GM)やクライスラーといった地元勢が破たん後の回復途上にある中、もっとも有力だったのがトヨタであった。が、昨秋来の相次ぐリコールでせっかくの商機を幾分逸している形だ。2月の米国新車販売台数は全体で13%増だったが、トヨタは9%減。一人負けとなった。

トヨタが減ったぶん他社が増えれば、それは単なるブランド間で乗り換えに過ぎず、市場全体の売り上げは変わらない。その意味で、ホンダ<7267>や日産自動車<7201>が漁夫の利に浴すると見るのは早計にすぎる。

自動車という商品は高級品であり、製品ごとの個性が強いため代替性が小さい。なおかつ、販売店店員が購買行動に与える影響も大きい。こうしたことから、AがだめならBでもまあまあ事足りる飲料や洗剤とは違い、トヨタしか乗りたくないという顧客は確実かつ膨大に存在するのだ。彼らが、リコールのほとぼりが冷めるまで乗り換えを控えようとするだけで、市場全体の回復の勢いは容易に削がれうる。

世界販売台数がピーク時の6500万台に戻るにはまだ時間がかかるというのに、業界は新たな問題に頭を痛めている。
(高橋 由里)

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