アニマルスピリットは知っての通り、ウォール街をワイルドに駆け巡るものだ。だが、数字を分析すると、今の強気相場が見かけよりもさらに熱狂的となっていることが分かる。
世界の株式市場の時価総額は今、およそ100兆ドル(約1京350億円)。米国企業は株式公開で過去最高の1750億ドルを調達した。約3兆ドル相当の社債は利回りがマイナス圏で取引されている。
新型コロナウイルス感染が拡大する中、企業は新たなロックダウン(都市封鎖)に打ちのめされており、経済サイクルには生命維持装置が付いたままだ。一方、終わりなき金融刺激策と新型コロナのパンデミック(世界的大流行)後の世界への期待感に駆り立てられ、デイトレーダーも機関投資家も歴史上最も緩和的な金融状況を謳歌(おうか)している。
スイスのジュネーブを本拠とする金融機関レイルのセドリック・オザズマン最高投資責任者(CIO)は、市場の「センチメント指標は高揚感に向かいつつある」と指摘。 「サンタクロース・ラリーに乗り遅れるのではないかという不安感から人々は慌てて投資している」と付け加えた。
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死や病気、経済的災厄に見舞われた今年の市場で見られるフロス(小さな泡)の兆候を以下にまとめた。
IPOブーム
株式公開ラッシュほど株価のピークを想起させるものはない。スノーフレイクやエアビーアンドビーの株式公開は今年の米国での新規株式公開(IPO)の規模を過去最高の1750億ドルに押し上げた。
特別買収目的会社(SPAC)による今年の資金調達は600億ドルを超え、それ以前の10年間の合計を上回った。SPACはIPOの時点では買収先が特定されず何でも買えるため、「ブランクチェック(白地小切手)会社」とも呼ばれる。
今年のIPO銘柄の上場初日のリターンは平均で40%と、1999年や2000年を除けばこれまでで最高という試算もある。
こうした中、新規上場株の動きに連動する上場投資信託(ETF)の「ルネサンスIPO・ETF」は空前の関心を集め、今年は2倍強に値上がりした。買収標的企業を発表していないSPACでさえも、今年は20%近い値上がりだとビスポーク・インベストメント・グループは指摘。「それが熱狂の兆候でないとしたら、何がそうなのか分からない」と同社アナリストらはリポートに記した。
株価ラリー
ロビンフッドを利用するデイトレーダーらは今年、テクノロジー株のオプションから航空会社株まで幅広い投機を行ったことからウォール街の話題となった。こうした小口投資家が機関投資家と共に株価ラリーを追いかけたため、S&P500種株価指数の株価売上高倍率は2000年のピークを約16%上回っている。
あらゆる銘柄が値上がりしており、ラッセル3000指数構成銘柄のうち最も空売り比率が高い銘柄で構成されるゴールドマン・サックスのバスケットは今四半期に約40%上昇している。より広範な指数の3倍の値上がりだ。
センチメントレーダーによると、ラッセル2000指数が底値から95%超の急上昇となるたびに、その後3カ月はリターンがマイナスになる傾向があるという。現在は3月の安値から100%近く値上がりした水準にある。
原題:A Speculative Frenzy Is Sweeping Wall Street and World Markets(抜粋)
著者:Bloomberg News
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