長崎に「中国製フリーゲージ」が走る日は来るか 日本のFGTとは違う軌間可変システムを採用?

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もちろん、今回完成した車両とは別に、車体の大きさを日本の在来線にあわせたFGTを製造できる可能性はあるだろう。しかしその場合でも、日本の新幹線と在来線で営業運転できるかどうかは判断しづらい。

FGT自体はすでに実用化されており、世界初の営業運転は1969年、フランス(1435mm)とスペイン(1668mm)を結ぶ国際特急「カタラン・タルゴ」で始まった。当時のFGTは動力のない客車だけで、それぞれの軌間ごとに機関車を付け替えて走っていたが、いまは自走できる電車やディーゼル機関車にもFGTがあり、軌間可変の方式も複数開発された。

中国FGTについては、あくまで軌間変換装置を通過するときの報道映像を見た限りの印象だが、スペインの車両メーカー・CAF社が開発した軌間可変システム「BRAVA」と似た構造で、日本FGTとは方式が違うように思えた。

違いは「モーターの位置」か

電車のモーターは台車に搭載するのが一般的で、日本FGTの試験車も「台車搭載タイプ」だ。これに対して「BRAVA」は車体にモーターを設置する「車体装架タイプ」。モーターと車軸をシャフトでつないでいる。気動車の車体装架エンジンをそのままモーターに置き換えたような構造だ。

BRAVAシステムを搭載したスペイン国鉄(renfe)のフリーゲージトレインS120形(写真:CAF, Construcciones y Auxiliar de Ferrocarriles, S.A)

車体装架は台車搭載に比べ機構が複雑で、メンテナンスに手間がかかるなどの短所はある。一方、FGTは軌間可変の装置類を台車に搭載するため、非可変の車両に比べスペースの制約が大きい。モーターを台車に載せない車体装架なら台車内のスペースに余裕が生まれる。ある意味、FGT向きの動力方式といえるだろう。

JR九州の古宮専務も、「詳細はわかりかねるが、日本で開発していたFGTと動力の方式が大きく異なると認識している」と県議会で答弁しており、少なくとも台車搭載タイプではなさそうだ。

ただ、日本の鉄道では車体装架タイプの電車の実例が少なく、とくに高速運転の新幹線車両での採用例は皆無だ。仮に長崎ルートに導入したとしても、慣れないシステムでは導入初期段階のトラブル発生のリスクが高まるし、日本国内の電車としては特殊なシステムになるためスケールメリットを得にくく、高コストになりやすい。

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