長崎に「中国製フリーゲージ」が走る日は来るか 日本のFGTとは違う軌間可変システムを採用?

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実は武雄温泉―長崎間をフル規格で整備することが決まった2012年の時点では、FGTを使って博多―長崎間の直通運転を行う計画だった。FGTとは軌間が異なる鉄道を直通できる車両のこと。軌間の変更点に軌間変換装置を設置し、ここを通過するだけで車輪の間隔が自動的に変わる。これに加えてFGTの車体の大きさを在来線にあわせれば、新幹線と在来線を直通できる。

日本のFGTは鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)や鉄道総合技術研究所(鉄道総研)などが中心になって、研究が進められてきた。1998年に第1次試験車両が完成。2007年の第2次試験車両を経て、2014年からは長崎ルートへの導入を視野に入れた第3次試験車両による走行試験が始まった。

2014年に登場したFGTの第3次試験車両。耐久走行試験でトラブルが発生し、試験は事実上中断した(編集部撮影)

しかし、第3次試験車両の耐久走行試験では車軸が摩耗するなどのトラブルが発生し、試験は事実上中断。営業車両の製造は武雄温泉―長崎間の部分開業に間に合わないと判断され、在来線と新幹線を武雄温泉駅で乗り継ぐ方式を採用することになった。さらに長崎ルートの営業主体であるJR九州は2017年、FGTは高コストで採算が取れないとし、FGTの導入自体を事実上断念する意向を示した。

「全線フル規格」案に佐賀県は反発

これを機に国や長崎県、JR九州は、長崎ルートの全線フル規格整備を考えるようになった。FGTで在来線を走るはずだった新鳥栖―武雄温泉間も、フル規格の新幹線を建設することにしたのだ。

しかし、これに佐賀県は強く反発した。未着工の新鳥栖―武雄温泉間はすべて佐賀県内で、建設費は約5300億円と見積もられている。現在の財源スキームでは、建設費の地元負担分(JRが支払う線路使用料を除いた分の3分の1)も、佐賀県がすべて拠出しなければならない。

これに加えて佐賀と福岡の距離は短く、現状でも比較的短い時間で移動できる。佐賀県にとってフル規格は、膨大な費用がかかる割にメリットが小さいのだ。こうしたこともあって佐賀県は環境影響評価の手続きに入ることも拒否しており、着工のメドが立たない状態になっている。

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