Jリーガー「白血病」診断前に食べた焼き肉の味 家族巻きこむ申し訳なさと「どうしようもなさ」
「練習に行かせてくれよ! なんでなんだよ!!」
しばらく天井を見つめていたが、もう病院への手配をしていると言われたら、病院に行かないわけにはいかない。
僕はベッドから起き上がると、タクシーで済生会新潟病院に向かった。その道すがら、僕は母に電話をした。
「今から済生会病院に行ってくる。どうやら白血球の数値が異常に高いらしいから、詳しく調べてもらうよ」
そして、1人で病院に行き、15時過ぎに検査の結果が出た。
「早川さーん」
病院の待合室で僕の名前が呼ばれた。恐怖はなかった。むしろ、この得体の知れない相手の正体を知りたい、その一心だった。それほど僕の精神は限界にきていた。
相手の正体が見え、安堵した
医師の前に置かれたいすにゆっくりと座り、小さく深呼吸をした。
僕の顔を真剣に見つめてくる医師の表情を見て、僕は覚悟を決めた。
「今の段階では、ほかの病気の可能性もありますが……白血病の可能性があります」
白血病の疑い。これは自分でも知っている病気だった。
「はぁ……そうなのか……」
全身の力が抜けていくのがわかった。
それは、決して絶望や計り知れないショックによるものではなく、安堵からくるものだった。
「なんだ……だからこんなにもつらかったんだ。動けなかったのは、俺のせいじゃなかったんだ」
得体の知れない相手の正体が見えてきた。もちろん、少なからずショックはあったが、自分で自分をようやく認めることができた気分だった。
それまでは「俺、プロなのに一体何やってんだ」とか、「本当に情けない」と思っていた。でも、それは僕のせいじゃなかった、病気のせいだったんだって。
人間、誰しも「見えない恐怖」「得体の知れない相手」がいちばん怖いと思う。僕もそこが本当に怖かった。だからこそ、僕は診断されたら、割り切ってその病気と闘おうと思った。
サッカーは一度辞めて、しっかりと治して、そこから先の人生は頑張って復帰する。そして、自分が目指していた先生になるためにやっていこう。
もちろん、プロ選手を引退する可能性も十分にある。それだったらサッカーを教える側に回りたいと思っていた。ただ、まずは今、正体を現した目の前の相手と闘わないといけない。
僕の日常が一気に変化した──。
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