iDeCoを放置する人が知らない「手数料」の恐怖

転職などで企業型から移管するときは要注意

手数料は月約400円ですから、年間だと400円×12カ月=4800円になります。陽子さんの確定拠出年金の残高は約30万円です。定期預金で運用していますから金利は0.02%。単純計算で、1年間で30万×0.02%=60円の利息がつくことになります。つまり、60円の利息をもらうために4800円の手数料を支払っているという状況です。

利益は60円−4800円=−4740円とマイナスになります。利回り換算すると、−4740円÷30万円×100%=−1.58%。つまり、マイナス1.58%の定期預金に預けているのと同じということです。

陽子さんとしても不本意な状態になっているということがわかりました。iDeCoは手数料がかかりますが、加入者として積み立てを行えば、積立金額を全額所得控除できる節税メリットを得られます。また、運用益が非課税、受け取り時にも税制優遇がありますし、何より積み立てによって資産を増やすことができます。

掛け金を納付しない「運用指図者」のデメリット

iDeCoは老後資産形成に効果的な制度です。しかし、放置してしまうと自分の資産を食いつぶす不本意な制度になってしまうのです。しかも、運用指図者になると、受取時の税制優遇の金額が小さくなってしまいます。運用指図者の期間は加入期間としてカウントされず、非課税上限額が小さくなるためです。

iDeCoの資産を一括で受け取る場合、加入期間が長ければ長いほど、退職所得控除という控除額が大きくなり、その結果、非課税上限額が大きくなる仕組みになっています。陽子さんの場合、運用指図者の期間が10年なので、10年分の退職所得控除がなくなったことになります。

今の状況を続けると、陽子さんにとってiDeCoはデメリットしかありません。しかしiDeCoは途中でやめることはできません。そこで、陽子さんはもう少し手数料が安い運営管理機関に資産を移し替えました。そのうえで運用指図者を辞めて加入者になる(積み立てを行う)ことにしました。

さらに、定期預金の比率を減らし、投資信託での運用も積極的に行っていくことにしました。最初に設定しておけば、後は自動で積み立てられますから難しいことはありません。陽子さんとしても、今気づくことができ、よかったといえるでしょう。

2020年9月時点で、iDeCoの加入者は約170万人、運用指図者は約67万人です。加入者、運用指図者とも年々、増加しています。運用指図者の中には、積み立てをするお金を捻出できない、あるいは国外に居住するなど運用指図者にならざるをえない理由の人もいることでしょう。

しかし、面倒だからとか、よくわからないからといった理由で放置している場合は、運用指図者のままでいるデメリットを知ったうえで、今の状況を続けるかどうか、判断されることをおすすめします。

自分の老後のお金のことです。ファイナンシャルプランナーとしてマイナス金利の口座にお金を預けることはおすすめしません。iDeCoをメリットのある制度として活用することを考えてみてはいかがでしょうか。

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