「子どもは煩わしいものだと思っていました。少なくとも大学を卒業する22歳まで面倒をみなくちゃいけないでしょう。僕は私立大学出身なので、自分の子どもが国公立に行けるとは思えません。給料がカットされたりしているのに初年度だけで100万円とか無理! 週刊誌では事件取材が多くて、ろくでもない家庭ばかりを見ていました。子どもが万引きをして謝りに行くとか、嫌だなあと」
ネガティブな想像ばかり膨らませていたという啓介さん。今は「できちまったものは仕方ない」と言いながら息子を可愛がっている。苦笑しながら夫の話を聞いていた佐和子さんのほうは結婚願望があったのだろうか。
「結婚はすごくしたかったし、子どもも欲しいと思っていました。でも、30歳のときに8年間付き合っていた男性と別れてしまったんです。婚約はしていたのですが、私が踏み切れませんでした。相手のことを頼りなく感じたからです」
短大を卒業し、銀行勤務などを経てから念願のCAとなった佐和子さん。努力を重ね、国際線のビジネスクラスの責任者を務めるようになってからは仕事がどんどん面白くなっていた。
「お客様も含めていろんな方と出会うし、自分も努力をしていたので、悪く言うと調子づいていたのだと思います」
当時の婚約者は、国家資格を取得する夢をあきらめて普通の会社に就職。佐和子さんとの家庭を築こうとしていた。「仕事で脂がのっていた」佐和子さんのほうはそんな彼を不甲斐なく思ってしまったのだ。今度は啓介さんが顔をしかめた。
「あくまで一般論ですけど、その年齢のCAさんは傲慢でお高くとまっているよね。不甲斐ないなんて言われたら男は傷つくよ」
「高嶺の花」を射止めた必死のデートプラン
筆者が取材する限り、多くの女性の場合は33歳ぐらいからモテ曲線が下降するのを感じて、わが身を謙虚に見つめ直す。しかし、一部のCAは別世界のようだ。佐和子さんは30代後半になっても合コンをどんどん組むことができ、5歳年上の男性と結婚前提に付き合い始めた。
「日本と海外を頻繁に行き来するような忙しい人でした。1年半も付き合っていたのに長期出張中には放置されて、連絡も途絶えがち。結婚して子どもを産みたい私は我慢できなくなりました。彼のことを忘れられないと言っている間の合コンで出会ったのが啓介さんでした」
佐和子さんは想念よりも行動が先立つようなパワフルな女性なのだろう。CAの一部は男性に対して傲慢、などと文句を言っていた啓介さんだが、実際に「キレイどころぞろい」の合コンに参加すると気分が高揚し、佐和子さんとは2人だけの2次会へ。その後、「頭が擦り切れるほど考えて」完璧なデートプランを練り続け、佐和子さんとの交際にこぎつけることに成功した。
「パリピ感があるこの人をどうやったら満足させられるのかと必死でしたよ。普段は五反田の吉野家で食事を済ませているような僕が、『東京カレンダー』に載っているような店を探しました」
佐和子さんはそんな啓介さんを「私のために一生懸命にやってくれている。一緒にいると温かい気持ちになる」と評価。やや上から目線である。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら