中国電気バス大手「BYD」が日ハムと組んだわけ ファイターズ新球場の輸送に、自動運転化も

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

一方、2023年3月のボールパーク「Fビレッジ」開業を目指すFSEにとって、バス問題は頭痛のタネだった。

ボールパーク建設地は最寄りのJR北広島駅から1.5キロ離れており、徒歩で約20分かかる。JR北海道の経営難もあり、新駅の建設は2027年度末に先送りされることになっている。さらに、運転手不足から、地元の路線バス会社がシャトルバスの運行に難色を示し、20~30台とみられるバスをどう運行させるかが課題になっていた。

北海道北広島市の建設予定地のフェンスに描かれたボールパークの完成予想図(記者撮影)

FSEは、最大3万5000人の観客のうち、7000人をバスで運ぶ計画を立てている。現在、北広島市内で路線バスを走らせている地元の中央バス、JR北海道バスだけでは観客を運び切れず、FSEは貸し切りバス業者も交えて協議を続けている。

FSEの前沢事業統括本部長は「想定以上に協力してくれるバス会社がたくさんある。協議を重ね、開業までにバスの運行に支障のないよう着地点を見いだす」と話す。

将来は自動運転化も視野に

BYDとの提携により、FSEは将来の自動運転化も視野に入れている。FSEはもともと、北広島駅とのシャトルバスでBRT(専用車線などでのバス高速輸送システム)や自動運転化の構想を持っていた。EVバスは自動運転との親和性が高く、BYDはANAと羽田空港内で自動運転の実証実験を重ねている。「EVバスの導入は、将来の自動運転化に向けた一歩で、構想の着手と捉えてもらっていい」(前沢氏)。

EVバス導入をめぐって大きなハードルになっていたのが充電器の規格だ。日本ではトヨタ自動車、日産自動車、三菱自動車工業などが推進する「CHAdeMO」(チャデモ)が主流だが、BYDの大型EVバスはヨーロッパで主流の「Type2」(タイプ2)の規格で、BYD製の充電器を使わなければならなかった。日本に導入されている小型の「J6」はすでにチャデモ対応になっているが、大型車ではまさに今回の「K8」からチャデモに対応することになる。

日本シフトを強めるBYD。花田副社長は「沿岸地域での塩の対策、寒冷地での凍結路面の対策も経験がものを言う。部品の劣化や性能はどうなるのか、日本では6年間、広い地域で四季を経験して蓄積したノウハウは大きい」と胸を張る。気づいた時には、日本で走るバスはBYDだらけ、ということになっているかもしれない。

森 創一郎 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事