元売りが価格体系変更、板挟みの系列スタンド 需要が減退する中での仕入れ価格上昇に苦悩

拡大
縮小

元売りの生産分や輸入ガソリンなどが、商社などを通じて系列外SSに流れる経路は「業者間転売(業転)ルート」、その商品は「業転玉」と呼ばれる。業転玉は今や全体の約2割に達し、系列向けと比べて1リットル当たり平均3~4円、最大5円強も安い。元売りのブランド料がかからず、余剰品がスポット的に安値で流されているからだ。

コスト連動方式で元売りがマージンを拡大しても、系列の販売が落ちれば需給バランスが崩れ、業転玉が増えるだけ。系列特約店が安い業転玉を買う“浮気”も増える。結果的には、元売りのマージンが抑圧され、元の木阿弥だ。

今後も需要減少は確実

業転のスポット取引の指標が陸上RIM。リム情報開発の関係者からは「元売りの収益が厳しいのは事実だが、RIM価格の想定外の安値は、元売りの供給過多の要因も大きい。今になって調査方法まで批判されるのは心外」との恨み節も出る。

実際、3月末にJXの室蘭製油所や出光の徳山製油所が停止されるなど、「高度化法」に従って供給能力が削減された結果、4月のRIM価格は上昇し、元売りのマージンは拡大した。RIMが機能していないわけではない。

結局、重要なのは元売り自身の需給対応能力だ。国内の石油製品の生産能力は4月現在、日量398万バレルと6年で約2割削減され、過剰能力は64万バレルまで縮小した。

この先も需要減少が確実で、供給能力削減や輸出増強の取り組みは不可欠だ。業界内外から指摘される元売りの高コスト体質も是正が迫られる。そこに手をつけず、横並びで仕切体系を変えれば消費者へのシワ寄せもごまかせる、と思ったら大間違いだ。

「週刊東洋経済」2014年6月7日号<6月2日発売>掲載の「核心リポート03」を転載)

中村 稔 東洋経済 編集委員
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