疫学者700人がコロナ禍で「絶対にしない行動」 ワクチン接種が始まってもマスクは必須に

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今回の調査では、アメリカ疫学研究学会の会員と個別の疫学者に電子メールで回答を依頼。調査期間は11月18日〜12月2日で、案内を送付した約8000人の疫学者のうち700人から回答を得た。4分の3が学術機関所属。新型コロナに部分的にでも関連する研究を行っている回答者の割合も、全体の4分の3を占めた。

一般国民に対する感染対策の呼びかけが十分に効果を上げていないこと、またアメリカ国民の間で科学不信が高まっている現状に失望や怒りを感じていると答えた疫学者は多かった。マスク着用や外出規制といった対策が政治のおもちゃにされてしまったことで、悪影響が長期に及ぶことを疫学者は恐れている。

「専門家としても、一個人としても、このウイルスには自らの至らなさを思い知らされた」と、スタンフォード大学のミシェル・オッデン准教授はコメントした。「アメリカという国の対応が、ここまでぶざまなものになるとは夢にも思わなかった。課題は山積している」。

コロナ後に残る「長期的な影響」とは

今後の見通しについては、ワクチンのおかげで来年夏にはどこかの段階で以前の生活を部分的に取り戻せるようになる可能性がある、とする回答も見られた。ただ、極めて効果的な治療薬が開発されない限り、現在の予防策は一定程度維持される必要がある、との回答もあった。大多数の疫学者が今後も必要な措置として言及しているのが、マスクの着用だ。

「公共の場で大人数が密になって集まったり、飛行機などの公共交通を利用したりしたときに(科学者の)私が個人的に安心できるような状態になるまでには、まだ数年かかると思う」(ノースイースタン大学のベス・モルナー准教授)

新型コロナが身体に与える危険性が後退したとしても、ほかの面で長期的な影響が残ると警告する疫学者もいた。

「メンタルヘルス(心の健康)のケアは今後も極めて重要な問題であり続ける」との回答を寄せたのは、ペンシルベニア大学でポスドク研究員を務めるダニエル・ヴェイダー博士だ。「世の中のストレスは高まっている。コロナによって引き起こされた不安や悲しみに、多くの人々が生涯悩まされ続けることになる」という。

(執筆:Margot Sanger-Katz記者、Claire Cain Miller記者、Quoctrung Bui記者)
(C)2020 The New York Times News Services

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