グーグルが「感染症学者」をスカウトした理由 テック企業で医療の専門家が果たす役割とは

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厚生労働省がグーグルとアップルの接触確認APIを用いて開発したアプリ「COCOA(ココア)」。現状で2000万ダウンロードを超えた(記者撮影)

また、アプリは一般の人々が接触確認の担当者に連絡を取ることを促すものだ。かつての公衆衛生の世界では、接触確認の担当者が固定電話で連絡し、連絡を受けた人は電話口で質問に答えていた。足で稼ぐ地道な疫学調査は長年の課題だった。

だからこそ新しい接触確認の方法が世界中で広がっている。規模の必要性だけでなく、人々のテクノロジーに対する見方が変化したことも大きい。コミュニケーションを(電話だけでなく)テキストベースにしたい人もいれば、ほかの方法を好む人もいる。世界の期待に応えるために21世紀らしいインフラを導入し、公衆衛生の現代化が進んでいる。

膨大なデータが拾える世界では能力が広がる

――コロナ対応だけでなく、グーグルヘルスは今何に取り組んでいるのですか。

医療・健康分野に関する取り組みはグーグルのさまざまな部門で行われていたが、昨年1つの組織に集約された。医療現場に向けた取り組みとしては、AIを活用し、放射線画像の読影のスピードを上げたり、病理医が判断しきれない検体からがんを見つけ出したりする研究のほか、疾病の予測モデルの開発や電子カルテ内の情報の見つけやすさを改善するといったものがある。

これらは医師が求めていることだ。誰もが完璧ではない。一度にすべての患者を診ることもできない。ツールによって、医師の目、耳、脳の能力は拡張できる。どんなに優れた医師や看護師だとしても、膨大なデータが拾える世界ではもっと能力が広がる。

われわれはグーグルにおける医療・健康分野の外部企業との提携についての責任も担っている。(外部企業からの情報提供を受け)検索やユーチューブでは信頼できる情報を表示し、マップではPCR検査ができる場所が検索できるようにしている。クラウドではオンライン診療などのパートナーと連携し、彼らが消費者にサービスを提供できるようにしている。

入社して1年近く経つ中で会社のことを深く知ったが、チームのモチベーションの高さに驚いている。それぞれが、医療のシステムをよくしたいと思った経験やストーリーを持っているからだ。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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