グーグルが「感染症学者」をスカウトした理由 テック企業で医療の専門家が果たす役割とは
アメリカではコロナに関する地域別の検索トレンドを公開し、感染拡大との関連性を示している。例えば、「無嗅覚(anosmia)」という単語の検索数と感染者数の関連性はすでに出ている。研究者が活用する方法はさまざまあると思っている。こうしたデータの公開も世界各国に広げる計画だ。
最近では日本で「COVID-19 感染予測」(今後4週間の陽性者数の推移をさまざまなデータからAIアルゴリズムで予測)のデータを公開した。このデータは、医療用品や人員確保の計画の策定において参考になる。医療や公共機関などの組織が今後の動きに備えるために役立ててもらいたい。
APIを用いたアプリは特効薬にはならない
――特に注目を集めたのが、アップルと共同開発したブルートゥースによる接触確認のAPIでした。
目的は2つ。人々が最近どこに行ったかを思い出してもらうため。もう1つは、公共の場において誰と接触したかわからないという問題に対処するためだ。アップルとグーグルのエンジニアは、GPSよりもノイズが少なく、今話した2つの問題への対処に適している技術としてブルートゥースを選んだ。
現状35カ国でAPIを用いたアプリがリリースされているが、特効薬になるとはまったく思っていない。あくまで保健所の接触確認のキャパシティーを広げるための支援ツールだ。公衆衛生の現場に対し、今使っているほかのツールとこの仕組みをどのようにつなげたらいいかを理解してもらうのには、多大な労力がかかった。保健所には最新のITインフラはなく、テクノロジーの恩恵を受けるにはかなり頑張らなければならない。
われわれが公衆衛生当局に代わってアプリを開発する取り組みも始めた。現在はアメリカのみだが、ほかの地域にも広げていく。公衆衛生の現場にアプリ開発のノウハウはない。現場の声を聞きながら、テクノロジーの活用を促し、データの分析を支援し、彼らの業務における摩擦を取り除けるようにしていきたい。
――感染症や公衆衛生の専門家として、接触確認アプリに期待していることは何ですか。
公衆衛生の現場が感染症のケースを把握し、クラスターを見つけ、感染者を隔離し、治療するうえで根本的に必要なツールだと考えている。今回のようなパンデミックでは、規模が重要だ。結核やHIV、梅毒については接触確認のノウハウがあっても、この規模になるとどの国でも大きな負担がかかる。だから今、世界中でデータ管理ツールが導入され、業務フローを自動化している。
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