日本人頼みの「オーロラリゾート」で起きた異変 一時は社員90人を解雇、生き残り術を模索中
アラスカまでわざわざやってくる中国人は、お金をたくさん使う。4人乗りのチャーター機を貸し切って日帰り観光をする若い1人客もいた。
「日本人旅行客がどれくらい来るかは、JALがチャーター機を年に何回飛ばすかに左右され、こちらの努力だけではコントロールできない」
そう考えた経営者は、日本人客に依存するリスクを分散するためにも、中国マーケットの開拓を強化。
2018年秋に中国語を話せるアメリカ人スタッフを雇用し、2019年3月には中国のSNS微博(ウェイボー)や微信(WeChat)で公式アカウントを開設した。
2019~2020年冬季、JALはチャーター便を運航しなかったが、中国人の予約が伸び続けていたため、日本人の減少分は埋まりそうだった。ほっとしているところにコロナが直撃し、2020年1月下旬の春節以降、中国からの予約はすべてなくなった。
手厚い手当と住居・食事付きの失業生活
「どうしよう、どうしようと言ってる間に、アメリカでも感染が拡大し、身動きが取れなくなった」と時田さん。3月18日にトランプ大統領は非常事態宣言を発令。アラスカ州の面積は日本の約4倍。人口は70万人でソーシャルディスタンスは維持しやすいが、州政府は医療体制の崩壊などを懸念し、3月下旬に州外との往来を規制した。
チナ温泉リゾートも非常事態宣言と同時に休業に入り、約90人いた従業員は、電力を維持する保守担当者数人を除き全員が一時解雇された。それでも約70人は再雇用を視野に、リゾートで働き続けることを選んだ。
「トランプ政権がコロナ対応で失業手当を大幅に積み増したので、月に4000ドル(約41万円)ほどの手当を受け取れた。従業員のほとんどにとって、普通に働くより額が多かった。加えて経営者が営業再開を見据え、残る意志を示した従業員に住居と昼食・夕食を無償提供した。従業員にとっては退屈だけど、快適な失業生活だった」
オーナーは同時に、感染を防ぐためにリゾート内から一歩も出ないことも要求した。つまり広大な敷地に宿泊施設、レストラン、温泉が点在するリゾートは、従業員たちの隔離施設と化したわけだ。
時田さんも中学生の娘と一緒に市内のマンションからリゾートに移り、雪かきなどをしながら1カ月を過ごした。その後、リゾートは雇用を維持するための経済対策「Paycheck Protection Program (通称PPP)」を使って4月中旬に従業員を再雇用。感染拡大がやや落ち着いた5月下旬、2カ月ぶりに営業を再開した。
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