日本人頼みの「オーロラリゾート」で起きた異変 一時は社員90人を解雇、生き残り術を模索中
「1月末に中国人ツアー客から『出国できない』と連絡が来たときは、宿泊料も前金でもらっていたので、キャンセルではなく宿泊期限を1年延長する措置を取った。そのときはコロナがこれほど長期化することも、アメリカでここまで広がることも想像もしていなかった」
そう話すのは、アラスカ州フェアバンクスの「チナ温泉リゾート」でアジア担当マネジャーとして働く時田雅子さん(47歳)だ。
オーロラ鑑賞と雪見風呂を楽しめる同リゾートは日本人用に整備され、最近では中国人の人気観光地になっていたが、コロナ禍で状況は一変。今年3月にリゾートの休業とともに、時田さんら従業員90人は一時解雇(レイオフ)された。「Go To トラベル」のような旅行支援政策もない中で、国内客で運営を維持しながら、海外の人々に忘れられないための試行錯誤が続いている。
JALのチャーター便でシニア観光客が増加
チナ温泉リゾートは、アラスカ州第2の都市フェアバンクスから車で100キロの郊外にあり、自家発電で電力を賄う秘境的存在だ。元々は州政府が所有していた施設を地元の企業家が1998年に買い取り、翌年同リゾートで働き始めた森茂雄さん(62歳)が露天風呂を作るなど改装を進めた。
2000年代に入るとJALがオーロラシーズンに日本ーフェアバンクス間のチャーター便を飛ばすようになり、大手旅行会社もパッケージ旅行商品の販売を始めたことで、日本人中高年の間でアラスカ旅行が人気化。
チナ温泉リゾートでも2010年ごろには冬季の宿泊客の8~9割を日本人が占めるようになった。
同リゾートで10年以上働く時田さんが中国人客の増加に気付いたのは2012年ごろだ。
その頃は留学やビジネスでアメリカに滞在中の、英語が話せる中国人がほとんどだったが、ほどなく中国本土からもツアー客がやってくるようになり、日本で「爆買い」という言葉が流行した2015年に、同リゾートでも中国人宿泊客の数が日本人を逆転した。
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