ゴールから逆算する野望の設計図

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ゴールから逆算する野望の設計図

塩田潮

 かつて中曽根元首相は「一番心がけていることは」と聞かれると、決まって「平常心」と答えた。鉄面皮のイメージが強かったが、政界にうごめく思惑や計略、政治家たちの欲望と嫉妬などが気になり、心千々に乱れることが多かったのだろう。
 だが、それ以上に「平常心」を阻害していたのは自身の政治的野心ではなかったか。一方、田中元首相は「政治は欲望の調整作業」という名台詞を残している。人間の多種多様な欲望を調整するのが政治の最大の仕事という見立てだが、調整の対象となる欲望には、自身の権力欲や野心も含まれていて、その自己制御も政治の重要なファクターと認識していたと思われる。

 いつまで権力の座を目指し続け、どんなふうにエネルギーを注ぐかという「野心の自己統御」は古今東西、与野党、国と地方を問わず、政治家の最大の関心事だ。だが、自身の意思で動かせないのが健康と年齢という二つの壁である。
 不意に襲う病気はともかく、年齢は誰でも意識の中にある。権力の座を狙う政治家たちは、ゴールから逆算して野望の設計図を描き、政治的野心を自己統御する。もちろん何歳までという明確な線引きはない。国民の側では世代交代を望む声が強いが、政治家の側は自己中心的に考える。昔は70歳前後、人間の寿命が伸びた昨今は1割増しで75~77歳くらいまでが勝負と想定している。

 鳩山首相は62歳で政権の座に到達した。小沢幹事長はいま67歳で、政治生活は長くて10年だから、野心的に動ける残期間はあと5~6年かもしれない。ポスト鳩山をうかがう63歳の菅財務相、56歳の岡田外相は、7年という持ち時間の差がこれからの野心の自己統御の仕方に表れるだろう。
 自民党で65歳の谷垣総裁に反旗を翻したのは61歳の舛添前厚労相と71歳の与謝野元財務相だが、谷垣打倒・総裁奪取か、離党・新党か、こちらも持ち時間の差が今後のカードの選択に大きく影響しそうだ。
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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