いまや老若男女が日常的に接するようになった無料動画サービス・YouTube。その台頭とともに拡大していったのが、動画クリエーター「ユーチューバー」たちの制作活動、認知拡大などをサポートしているユーチューバー事務所だ。
HIKAKIN(ヒカキン)やはじめしゃちょーなどの人気クリエーターが所属する事務所・UUUM(ウーム)は2017年に東京証券取引所マザーズ市場に上場した。同社と肩を並べ、ユーチューバー事務所の先駆的存在として存在感を高めてきたのがVAZ(バズ)だ。同社は人気ユーチューバーのヒカル、ラファエルらが所属していたことで有名だった。
ただ、やがてVAZは大きな問題を抱えるようになる。所属ユーチューバーの炎上が相次いだのだ。創業者の森泰輝氏は「統制が取れておらず、管理も杜撰だった会社は、大炎上に耐えきれず組織が崩壊。会社中にゴミが散らかり、全社会議もボイコットされるなど致命的な状態に陥った」と述懐する。
さらに、ヒカルやラファエルらVAZの看板ユーチューバーたちの多くが次々と退所。2020年には人気ユーチューバーの1人であった「ねお」の母親が、「年間にして数千万円のYouTube収益が出ても、月に30万ほどしか報酬が渡されない月も存在している」などと告発し、大きな反響を呼んだ。
そんな中、VAZは2020年10月、創業者の森泰輝氏が共同ピーアールの谷鉄也社長個人に株式を譲渡し、経営体制を刷新すると発表した。森氏はファウンダーという形で今後も同社に携わることになるが、会長には谷氏が、社長にはVAZが設立された2015年からVAZの顧問を務めていた小松裕介氏が就任した。
小松氏は伊豆シャボテンリゾート(旧名: ソーシャル・エコロジー・プロジェクト)の代表取締役を務め、退任後に谷氏が関わった共同ピーアールの委任状争奪戦のアドバイザーとなった。その後、顧問を務めていた小松氏の紹介によって、谷氏はVAZとの関係性を深め共同ピーアールとしての出資にも至ったという。
毀損されたブランドをどのように復活させるのか。谷会長と小松社長に聞いた。
経営陣交代で「大人な会社になる」
――創業者の森氏からVAZ設立の2カ月後から顧問だった小松氏へ、トップが交代しました。
谷鉄也(以下、谷):私のところに森前社長が相談してきたときには、彼の中ですでに辞める意思があった。(小松社長も含めた)3人で話したが、「(独自の再建が)厳しいので助けてくれませんか」と。ファウンダーとしては残ってもらわなければいけないが、マネジメントの部分では本人も「反省する部分がある」と話していた。
――12月の記者会見では経営陣の交代によって「大人な会社になる」と何度も述べていました。どういう意味でしょうか。
小松裕介社長(以下、小松):硬い言葉を使えば、「ケイパビリティ」の獲得が大人の会社になるということだ。ベンチャー企業には、組織がきちんと作れず、その結果、実行力がないということがよくある。
VAZはネット炎上を繰り返してきたが、そういったこともケイパビリティが欠けていたことに起因している部分もあるだろう。創業から5年経っているので、組織作りをしっかりやっていくことが僕の感覚で言えば「大人の会社になる」ということだ。
【2020年12月16日11時37分追記】初出時の表現を一部修正いたします。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら