「暴走老人」を生んでしまう日本の根本的な病巣 車以外の移動手段が貧困な社会にも問題あり

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「病気になって気づいたことがあります。ドライバーはクルマのシートに座っていますが、単に座っているのではなく、クルマの操縦のためにハンドル操作やクラッチやアクセルの操作を行っています。実際は、両手でハンドルにしがみつき、両足は床から浮いた状態です。つまりシートを介して体は空中に浮いています。そのためクルマの運転では、筋肉、特に四肢と体幹が大切だということに気づきました。

私自身は、思考は明瞭、意識はしっかりしているのですが、病気により老化が急激に進むので、体幹が衰え体を支えることがだんだん困難になり、両手でハンドルを操作できなくなってきています。このためハンドルに補助装置を付けて旋回操作をしやすくしたりしているのですが、だんだんハンドルの旋回操作が厳しくなってきています。それを実感する毎日なので、ともすれば落ち込むこともあります」

免許返納しても困らない移動の選択肢を

若林さんはこう続ける。

「こうして老いが進んでくると、生き方の選択がたくさんあって自由に自分で決められることがいかに大切なことか実感します。ノーマライゼーションは1950年代に北欧で生まれた考え方で、障害者も健常者と同様の生活ができるようにすることだけど、人が人らしく生きるには、生き方の選択を自分で選び取り、残存能力を最大限引き出す。そして自分の力だけで移動することがとても重要であることが分かってきました。

クルマに乗るな、免許を返せと言われても、返した後の社会イメージがないですし、誰も持っていません。タクシーチケットの配布もよいけれど、それだけでは足りません。アリバイづくりのようなお茶にごしです。免許を返納しても困らない、いろいろな移動の選択肢があるべきです。残存能力に応じた自転車やパーソナルモビリティ選びをサポートするサービスとか、それらを地域でシェアできて必要なときに定額制で貸してくれたり相談できたりするとうれしい。免許返納後の自由な足の確保こそが人生を全うする鍵だと思います」

まだまだ自分で動ける間に、何らかの移動能力低下対策(予防)を行うことにより移動障害を先送りすることが可能という考え方がある。それは人生の晩年時の障害とその対策によって健康寿命を長くし、不健康寿命を短くすることにつながってくる。

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