「暴走老人」を生んでしまう日本の根本的な病巣 車以外の移動手段が貧困な社会にも問題あり

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それにはまず自らの移動に着目し、自らの残存能力に合わせた移動方法を自由に選択できるようにすることがポイントであろう。若林さんが「免許返納後の自由な足の確保こそが人生を全うする鍵」と喝破しているように、免許返納と自由な移動の存在はセットで語られなければならない。

自動運転が問題を解決するには時間がかかる

日本はクルマ至上主義に染まっている。ドライバーを養成する強固な仕組みはあるが、運転スキルの見直しや運転免許証を返納する仕組みは魅力に欠けている。そしてクルマ以外の移動手段の選択肢を失い、家族への負担や経済を圧迫してしまうような移動貧困な実情がある。

『移動貧困社会」からの脱却 −免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット』(時事通信社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

また、自動運転が移動に関わる問題をすべて解決してくれるといった日本ならではの神頼みのような発想もある。自動運転が早く実用化されることを切に願うが、どうやらまだまだ多くの時間がかかりそうだ。たとえ無人のクルマがどこへでも自動で送り届けてくれる時代がやってきたとしても、人間は本能的に自分の体を動かしたり、自分で操作したり、どこかへ行きたいという欲求はなくならない。

高齢者の免許返納と返納後の移動手段の確保の問題は悲観的に捉えられがちだ。果たしてそうだろうか。例えば、2027年には年間100万人レベルの自主返納者が発生する可能性がある。また免許返納や家族内送迎に対するニーズは非常に大きく、加えて働き手の確保と生産性の向上の視点で家族内送迎に国がメスを入れれば、2019年から2030年には約3兆円規模の新たなマーケットが生まれるといわれている。このマーケットは、まったく手付かずの〝ブルーオーシャン〟だといっても過言ではなく、民間企業の腕の見せ所だろう。

楠田 悦子 モビリティジャーナリスト

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くすだ えつこ / Etsuko Kusuda

兵庫県生まれ。心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化と環境について、分野横断的、多層的に国内外を比較し、社会課題の解決に向けて活動。自動車新聞社モビリティビジネス専門誌『LIGARE』初代編集長を経て、2013年に独立。「東京モーターショー2013 スマートモビリティシティ2013」編集デスク、国土交通省の「自転車の活用推進に向けた有識者会議」「交通政策審議会交通体系分科会第15回地域公共交通部会」「MaaS関連データ検討会」、SIP第2期自動運転(システムとサービスの拡張)ピアレビュー委員会などの委員を歴任。著書に「最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本 」(ソーテック社2020年)がある。

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