小学生にダイヤ作成は難易度の高いテーマだったのではないか。運転計画課の小林課長は「難しい言葉を使用したほうがいい部分と、わかりやすく言ったほうがいい部分のメリハリをつけるようにした」と話す。例えば「スジ屋」という専門的な用語はあえて使ったほうが子供たちもプロの気分を味わえる、ということのようだ。「事前に運輸部の社員の子供たちでシミュレーションをして、我々とのギャップを探った」といい、準備の入念さもうかがえた。
そのうえで小林課長は「電車を利用するときにダイヤがどうなっているのかな、と考えてもらい、どんどん鉄道に乗ってもらえれば」と狙いを説明する。教室の子供たちも授業の後SL重連の走行を見学。東武鉄道の未来のファンにとって忘れられない鉄分豊富な一日となったに違いない。
逆風の中で生かす「強み」
東武ファンフェスタは今年で16回目の開催となるはずだった。今回のプレミアムファンツアーは例年のようなにぎわいはないものの、同社の広報担当者は「感染症拡大防止にはもちろん注意を払ったうえで、当社の鉄道事業の理解を深め、親しみを持ってもらうことがいちばんの目的だ」と車両基地にファンを呼ぶイベントの意義を強調する。
イベント参加をツアー客だけに限定することは、会場が密になるのを避けるという本来の目的だけでなく、プレミアムが付くことで1人当たりの単価の上昇が期待でき、鉄道会社側にもメリットがあると言える。
スペーシア、スカイツリートレイン、りょうもうの3つの臨時列車ツアーはいずれも「GoToトラベルキャンペーン」の対象。スペーシアのプランの場合、参加者大人1人の実際の支払いは1万3000円だが、旅行代金2万円のうち35%に当たる7000円に給付金が充てられている。また参加者に渡される地域共通クーポン3000円分は会場内のグッズ販売会で使用することができる。一方、出発が東武宇都宮駅、解散が北千住駅と発着地が異なる350型のツアーは、支払額は同額だがGoToの対象ではない。
行政の支援頼みの面は否めないが、決して安くはない旅行代金を払って参加してもらうには「ほかでは体験できない」というプレミアム感を打ち出す必要がある。今回のファンイベントは、SL重連運転はもちろん、臨時列車の運行など、ファンが喜びそうな多様なコンテンツを揃えることができる同社の強みが発揮できた一例と言えそうだ。一方で逆風の中でも助けてくれるファンを子供の頃から育成し、囲い込む工夫をすることの重要性も示している。
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