オークションが可能にする「新たな資本主義」 天才経済学者による「ラディカル」な思考実験

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そこで、市場を根本から理解し、再構築し、改良するというわれわれの立場を市場急進主義とし、市場原理主義に対比するものとして位置づける。

また、既存の社会の取り決めが不当な格差を生んでおり、集合行為を妨げているという点では、われわれは左派と同じ意見である。しかし左派の欠陥は、政府の官僚的エリートが社会の病理を治すとして、裁量的な力に依存していることだ。

左派が思い描くエリートたちは、善良で、イデオロギーが中立で、公共の利益をいちばんに考えているが、現実には時に恣意的だったり、腐敗していたり、無能だったり、悪いイメージが先行してしまって国民から信頼されていなかったりする。

市場にはもともと急進主義が備わっているとわれわれは考えている。その力を生かすためには、権力を分散するとともに、集合行為を促進しなければいけない。

われわれが思い描くラディカル・マーケットとは、市場を通した資源の配分(競争による規律が働き、すべての人に開かれた自由交換)という基本原理が十分に働くようになる制度的な取り決めである。

オークションはまさしくラディカル・マーケットだ。オークションでは参加者は互いに入札し合うルールになっているので、競売にかかるものは、それをいちばん必要としている人の手に渡ることになる。

ただし、入札価格の違いは、それをほしいと思う気持ちの差によるものだけでなく、富の格差によって生まれている場合もあることに注意しなければいけない。

オークションは不動産の売却、美術品、ファンドレイザーのためのものだと考えている人がほとんどだ。インターネット上では日常的に行われているとはいえ、それが広く一般に公開されることはない。

しかし、以下に述べるように、オークションが私たちの社会に浸透したら、リオを、そして世界を救うことができるかもしれない。

リオを売りに出すという思考実験

いま、リオという都市全体でいつもオークションが行われているとしよう。

あらゆるビル、企業、工場、ヒルサイドの土地に時価がついていて、時価を上回る価格を入札した人がそれを占用すると想像してみてほしい。

自動車のような個人の財産がオークションの対象になることもあるし、工場が排出できる大気汚染物質の量のように、通常であれば政治的プロセスを通じて決まるものまでがオークションにかかることもある。

本書の大半は、そうしたシステムがどうすれば機能するかを考察することに費やされている。

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