オークションが可能にする「新たな資本主義」 天才経済学者による「ラディカル」な思考実験
これは思考実験なので、オークションがスマートフォンのアプリ上で行われると仮定してみよう。このアプリは既定の設定に基づいて自動的に入札するため、入札価格をいくらにするか、ずっと計算していなければいけなくなるようなことはほとんどない。
帰宅したら自分のアパートがもう自分のものではなくなっているなど、予想される大きな混乱が起きないように、法律が整備されている。資産を手入れして開発するインセンティブが与えられ、プライバシーなどの価値観も守られるようにする。
このオークションで生まれた収益はすべて、「社会的配当」として市民に均等に還元されるか、アラスカやノルウェーの原油販売収益のように、公共事業の財源に使われる。
オークションがもたらす4つの変化
このオークションが生活に組み込まれると、リオの社会と政策は大きく変わる。
第1に、財産に対する考え方が変わる。住宅を所有することとビーチの一角を占有することには明確な線引きがあったが、それがあいまいになる。私有財産の大部分は公開され、いってみれば、自分の回りにある物を部分所有するようになる。
第2に、オークションはいつも行われているので、土地などの資源がひどく間違った使い方をされることもなくなる。
絶景が楽しめるヒルサイドに最高額を入札する人が、いまにも崩れそうなボロボロの小さな家がいくつも並ぶスラムをつくる計画をしていることはまずない。
都市の中心地に最高額を提示するのは、小規模の高級マンションのデベロッパーではなく、ミドルクラスの高層マンションのデベロッパーとなるだろう。そして新しく生まれた大量の中流階級が、それに入札するのである。
第3に、経済格差を生む最大の原因がなくなる。一見すると、オークションが行われたら、お金持ちが価値のあるものをすべて買い占めることになるのではないかと思えるかもしれない。
だが、ここで少し考えてみてほしい。「お金持ち」とは、どういう人のことを言うのだろう。お金持ちとは、事業や土地などをたくさん所有している人のことだ。
しかし、あらゆるものがいつもオークションにかけられているのであれば、そうした資産を所有する人はいなくなる。資産がもたらす利益はすべての人に等しく行き渡る。
第4に、リオ型のオークション・システムでは、数多くの重要な政治決定が政治家から引き離されて、市民の手に渡るので、腐敗を抑えられる。公的生活が改善すると、犯罪が減り、街の人々の暮らしが落ち着き、私的なコミュニティーに閉じこもらないようになる。
市場の一般的なイメージは、公的な領域を代替して弱体化させるというものだが、ラディカル・マーケットは逆に公的な生活への信頼を大きく高めるのである。
(翻訳:遠藤真美)
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