年収1000万「ワークマンフランチャイズ」の内情 狭き門FCのオーナーになるための「5つの条件」

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実は長島氏は以前にも脱サラを考えたことがある。電気工事士として多忙な毎日を過ごす中で、自分で自由に働く時間を決めたい、家族との時間をもっと大切にしたいとの思いから、独立してフリーの電気工事士として活動しようと決意したものの、妻の美香さんの反対にあう。

「自分の親が自営で失敗したのを見てきました。家族がいる中で、後ろ盾のない一か八かの独立はリスクが大きい、それよりも安定した勤め人のほうがいいと思い、反対したのです」と美香さんは当時を振り返る。

そんな美香さんもワークマンのFCに応募することには二つ返事で同意した。「ワークマンは大企業だし、本部という後ろ盾がある。今飛ぶ鳥を落とす勢いのある企業なのもあって、不安はありませんでした。むしろ、夫のこれまでの経験が活かせると後押ししました。私自身も化粧品の販売を経験しているので、お店をお手伝いできるかなと」。夫婦の経験を活かし、夫婦2人で経営できることに面白みと希望を感じたという。

FCオーナーになるために必要な「5つの条件」

ワークマンのFCのオーナーになるには、5つの条件がある。(1)個人契約のみの「専業」で店舗運営すること、(2)夫婦で参加すること(兄弟でも可だが、必ず専業のパートナーがいること)、(3)50歳未満(パートナー含む)、(4)健康状態が良好、(5)通勤30分圏内(車でも可)の地元住まいであること──である。

コンビニエンスストアのように法人契約による複数店舗運営を認めないのは、売り上げ・利益の追求のみに陥らず、オーナー夫婦が地元に密着した運営に真剣に取り組んでほしいから。「オーナーが複数店舗を運営して店には立たず、アルバイトだけに任せると店は荒れる。1店舗で1家族を養えるだけの利益は十二分に上げられるので、自分が住む街の人々のため、自分の家族のために店舗経営をしてほしいのです」と、ワークマン本部でフランチャイズを管理する加盟店推進部の八田博史部長は説明する。

ワークマン東京本部加盟店推進部の八田博史部長(筆者撮影)

ワークマンのFCは6年契約だが、99%が6年後に再契約を結ぶ。残り1%は定年退職などだ。同社では70歳定年制を導入しており、定年を迎えたオーナーの半数は息子など身内に事業承継するが、残りの半数は完全引退となり、本部が新たなオーナーを募集する。ワークマンは現在、人口10万人に対して1店舗の出店政策をとっており、FCオーナーを希望する場合は自宅の近隣に新店舗がオープンするのを待つか、既存店のオーナーの定年を待つしかない。

上尾日産通り店は、前のオーナーが70歳の定年を迎えたことによる募集だった。新業態店「ワークマンプラス」へのリニューアルもあり、本部としても若い世代のオーナーを募集していたところ、ちょうどよいタイミングで長島さん夫妻が応募してきたというわけである。「ワークマンプラスの開発により知名度が上がったことで、FCオーナー募集を告知すると応募が殺到する」(八田部長)。長島夫妻は運がよかったといえるだろう。

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