沖縄で進む「LGBT理解」、仕掛け人が貫く信念 主導する2人のホテル経営者の思いとは

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沖縄の基幹産業である観光は、新型コロナの影響が深刻だ。沖縄県によると、2020年度上半期(4~9月)の入域観光客数は前年比81・8%減の97万3100人。減少率、減少数とも過去最大を記録した。

インバウンド客がいなくなった国際通り(筆者撮影)

コロナ以前はインバウンド客が街に溢れていたが、海外客は10月まで7カ月連続でゼロ。航空便の国際線は、運航再開のメドが立っていない。国際通り周辺も閉店、廃業が相次いでいる。

高倉氏の経営するホテルも5月は休館した。「Go Toトラベル」キャンペーンの効果で回復基調にあるものの、客室稼働率は前年を大きく下回っている。

感染症対策を徹底したうえで、高倉氏はピンクドット沖縄に携わることにより、IGLTA(国際ゲイ&レズビアン旅行協会)総会の誘致をはじめ、沖縄でのLGBTの受け入れ促進に期待を寄せる。

「先輩の話を聞いてショックだった」

高倉氏がピンクドットのイベントに関わるようになったきっかけは、ゲイの先輩に協賛を頼まれたことだ。経営するホテルのすぐ近くには、ゲイバーなどが軒を連ねる繁華街「桜坂」があり、LGBTは縁遠い存在ではなかった。だが、「先輩の話を聞いてショックだった」という。

経済界との橋渡しに奔走するピンクドット沖縄の高倉直久・代表理事(筆者撮影)

「当事者がいるのは認識していたが、いじめや生きづらさを抱えている人がいるなんて考えたこともなかった。そういう社会を変えていかないといけない。

儲かるからやるという考えは間違いだが、応援した先に職場環境の改善があって、CSR(企業の社会的責任)にもつながる。LGBTの問題も企業から社会変革を起こして、大きな渦に巻き込んでいきたかった」

高倉氏は初回に協賛し、2回目以降はスポンサー集めなど経済界との橋渡しに奔走してきた。

高倉氏のホテルは、2014年にホテル・旅館として全国初のLGBTフレンドリー宣言を行い、性の多様性を象徴するレインボーフラッグを館内外に設置した。ジェンダーフリーのトイレを設置したほか、ハネムーン客の部屋をアップグレードするサービスを、同性パートナーにも広げた。「まずはLGBTという言葉を企業経営者に浸透させよう」と、新聞への掲載は経済ニュース面を希望した。

「高倉、そっち系になっちゃったのか?」「大丈夫?」

支援活動を始めた当初はそんな声も聞こえた。それに対して、「やめないよ。絶対、世の中変わるから」と応じた。

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