代替医療のトリック S・シン、E・エルンスト著/青木薫訳
通常医療(西洋医学)以外の治療法である代替医療は理学的証明が困難という限界がある。そこで著者たちは代替医療が本当に有効なのか、プラシーボ(偽薬)を駆使しつつ綿密な調査を試みる。
対象は鍼、ホメオパシー、カイロプラクティック、ハーブ療法だが、統計処理と多くの聞き取りによる評価は「効果はないに等しい」だった。ごく限られた効果は認めるにせよ、多額の医療費を伴う代替医療の横行に著者は否定的だ。ほかに32の代替医療が2ページずつ解説されている。
主張を裏付ける多彩なエピソードは説得的だし、先入観を排しひたすら科学的に調査したおかげで真実に迫れたのだ、とする正攻法の議論に疑問を呈するのは勇気がいる。しかし「科学的」統計だけで説明がつかない側面が病には多々あるのではないか。
東洋医学や食事療法、温熱療法、気、笑いの効用など奥が深い医の世界を「トリック」で終わらせてはいかにももったいない。(純)
新潮社 2520円
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