コロナ禍によって、市場に変化が起きたのは株式市場だけではない。実体経済をストレートに表しつつあるマーケットもある。不動産市場もその1つだ。通常、不動産価格は実体経済の動きを最後に反映するマーケットといわれているが、今回のパンデミックではだぶついたマネーが、不透明感の高い賃貸物件などの不動産市場を避けて資金が流出しつつあるといわれている。
実際に、このままの状態が長期にわたって続けば、不動産価格が大きく下落する可能性も出てきている。不動産価格が下落するのが、パンデミック収束後に経済が正常に戻る過程で起こるのか、あるいはその前に不動産価格のバブルが崩壊し、その影響で実体経済もさらに大きく崩れていくプロセスとなるのか。あるいはコロナ禍によって浸透したリモートワークなどの影響を受けずに、このまま不動産価格は維持されて、実体経済も回復していく過程を取るのか。あるいは、それ以外のプロセスを経るのか。残念ながらそれがわかる人はまだいない。
不動産市場の動きを見てみると、不動産市場も大きな岐路に立たされていることがわかる。例えば、東京都の都心5区大規模ビルの空室率を見てみると、需要の低迷で最近は高くなっている。仲介大手の三幸エステートの調べによると、2020年6月には0.66%だった空室率が、同年10月には1.14%まで上昇しており、募集賃料も6カ月連続で低下してほぼ1年前の水準に戻ってしまっている。
オフィス空室率は上昇が続いている
同様に、仲介大手の三鬼商事のオフィスの空室率では、東京ビジネス地区のオフィス空室率は10月時点で3.93%となっており、8カ月連続で上昇が続いている。
空室率が上昇しているのは、オフィスだけではない。事業用不動産で知られる総合不動産サービス大手の「JLL」が発表した「東京ロジスティクス マーケットサマリー」の2020年第3四半期版によると、東京圏の「物流施設」の空室率は、5四半期連続で過去最低を更新し続けており、最新の第3四半期(2020年7~9月期)の空室率は0.1%。前期比0.5%、前年比1.9%の低下となっている。
ただ東京ベイエリア地区の空室率は0%。物流施設にも全体的にはじわじわと影響が出ていることがわかるものの、もともと人気のある地区ではまだ影響が出ていないようだ。
都心部の不動産価格が反映されている「REIT(上場不動産投信)」の値動きを見ても不動産価格の低迷が続いていることがわかる。REITの価格を「東証REIT指数」で見ると、2020年2月20日に2250.65をつけた後、3月19日には1145.53まで下落。その後は1700前後で推移している。「脱東京」をキーワードにした価格の変動が始まっている、ともいわれる。
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