この世の春を謳歌してきたオフィスビル市場では、貸し手優位の状況が岐路に立たされているといわれる。同様に、やはり好調だった商業施設も、飲食店の廃業や新規出店に大きなブレーキがかかり、テナントの賃貸料は下落傾向が強まるとみられている。同様に、建てれば売れたホテル需要も今後の上昇余地は限定的といわれる。
一方、一部の物流施設などはコロナ感染が収束しても、需要の伸びが期待されている。また、賃貸マンション業界もほかの不動産よりもましという消極的投資が続くと予想されている。
ちなみに、同JLLがまとめた投資分析によると、2020年1~9月期の世界の商業用不動産投資額は、前年同期比33%減の4790億ドル(約50兆円)、第3四半期の投資額は前年同期比44%減の1490億ドル(約15.5兆円)となった。しかし、1~9月期の都市別投資額では、上半期に続いて東京が194億ドル(約2兆円)で第1位となった。第2位はソウル(142億ドル=約1.4兆円)、3位がロンドン(134億ドル)となって、相変わらず東京の商業用不動産への投資ニーズは力強いことがわかる。
不動産投資熱はいまだ冷めていない?
実際に、今年9月に発表された日銀短観では、不動産業界は「景気の先行き」を、今後「悪い」と考える企業よりも「よい」と考える企業が多かった。不動産以外では、「建築」「情報サービス」「対事務所サービス」「通信」などが、今後の景気を「よい」とみている。拮抗している「小売り」を除けば、それ以外の業界はすべて「悪い」と出ているなかで、不動産投資熱がいまだ冷めていないといっていいのかもしれない。
この時期に、新たな不動産投資にチャレンジできる体力が残っている企業や個人は、相場の状況を見て投資するのも1つの方法だが、長期に見た場合の景気の落ち込みなどに注意する必要があるだろう。1980年代後半の日本の不動産バブルは、バブル崩壊以後、全国の土地価格を10分の1にまで引き下げた。バブル崩壊の威力を侮らないことだ。
いずれにしても、将来のことはだれにもわからない。現在、バブルと思われている株式市場も、コロナによる産業構造の変革をいち早く反映しているものであり、さらなる株価上昇場面があるかもしれない。不動産価格も、都市部では一時的に大きく下落するかもしれないが、リモートワークの進展などで、地方とりわけ利便性の高い地方都市では価格が上がる可能性がある。
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