ボクは坊さん。 白川密成著 ~仏教の知恵で「生きる」ことを考える

ボクは坊さん。 白川密成著 ~仏教の知恵で「生きる」ことを考える

評者 仲倉重郎 映画監督

 四国八十八ヶ所霊場第五十七番札所栄福寺に生れた著者は、「世界で唯一の密教学科」というコピーにひかれて高野山大学に入学する。そこで「今に生きる僕たちにとっての仏教や密教」について考え続けた。

卒業後、すぐ寺には戻らずに本屋で働く。だが「坊さん」になる日は突然やってくる。住職の祖父が急逝したからである。24歳だった。

住職として初めて体験した死の場面で、不思議な感覚に襲われる。そこにはやわらかく温かい雰囲気があった。深いかなしみが充満しているが、最後まで温かい雰囲気が離れなかったという。そして、戒名を考え、位牌に書き、塔婆を用意し、葬儀で読む諷踊文(ふじゅもん)を書く。その行為を通して、「坊さん」という職業を誇りに思う。

「坊さんワールド」は忙しい。ある時はNam Starsの一員として野球大会に出場し、またある時にはボートの水軍レースに誘われる。

その中で、この若い「坊さん」はよく考える。信仰とは思考の歴史への信頼であり、宗教は自分の中の物語を呼びさますものであると。だから仏教の知恵で「生きる」ことをもっと考えたいと思っている。

そこで、突然、京都にある広告の学校に通い始める。仏の教えを自分の言葉にして伝えたいと思ったからだが、伝えるには伝える技術があるはずではないか。今までとは違ったルートで仏法に出会ってもらえるかもしれない。講師には糸井重里がいた。本書は、その縁で「ほぼ日刊イトイ新聞」に連載したエッセイである。

人の意見に耳を傾けるだけでなく、「自分ならこう歌う」ということを常に考えたいという。その真摯な生き方に、「死」ではなく「生きる」ことを考えようという気にさせられる。

しらかわ・みっせい
府頭山栄福寺住職。1977年愛媛県生まれ。高校を卒業後、高野山大学密教学科に入学。大学卒業後、地元の書店で社員として働くが、2001年、先代住職の遷化を受けて、24歳で四国八十八ヶ所霊場第五十七番札所、栄福寺の住職に就任する。

ミシマ社 1680円 285ページ

  

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