早期退職を機に「没落する人・幸せ掴む人」の差 失敗リスク減らす「10のチェック事項」も紹介

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呑みながら、久富さんが「早期退職を募集するなんて、うちの会社もまったく将来性ゼロだよ」と愚痴ったところ、小笠原さんは「将来性がないとわかっているなら、さっさと応募したらどうだ?」と言いました。そして、キョトンとしている久富さんに小笠原さんは「よかったらうちで働かないか?」と誘いました。

D社は順調に成長しており、小笠原さんは、将来の上場を視野に入れて管理体制を強化したい、そのために管理部門に大企業での経験が豊富な人材採用をしたい、と考えていました。小笠原さんは久富さんを勧誘するつもりで飲み会に誘ったようです。

久富さんは1ヵ月悩みましたが、自分のこれまでの経験を生かせること、実家で高齢の母親が一人暮らしをしていること、家族が快く賛成してくれたことから、D社への転職を決断しました。

久富さんの1年目の年収はC社の頃よりもやや減りましたが、実績が認められ、3年たって同程度になりました。久富さんはいま、将来の上場を目指して、生まれ故郷でハツラツと活躍しています。

一方C社は、その後も業績悪化が止まらず、昨年、再び早期退職を募集しました。今回は、割増退職金などの条件が前回よりも大幅に悪化しました。さらに、中高年社員を狙い撃ちした賃下げも行われました。そして今は、コロナ禍で会社自体が存亡の危機に直面しています。

早期退職の10のチェックポイント

早期退職には、勝俣さんのような失敗例も、久富さんのような成功例もあります。将来のことは不確実で、「絶対に大丈夫」という正解はないでしょう。

ただ、「どうせ未来のことはわからないから」といい加減に決めてはいけません。以下の10のチェックポイントを検討し、総合的に判断したいところです。

<10のチェックポイント>
1.現在の勤務先に将来性があるか?
2.転職(あるいは独立開業)してやりたい仕事はあるか?
3.転職することはできるか、転職先の当てはあるか?
4.転職先に将来性はあるか?
5.自分のスキル・経験は転職先で通用するか、転職市場で重宝されるか?
6.何歳でリタイアしたいか、リタイア後はどう生活したいか?
7.いま金融資産(借入金除き)がどれくらいあり、残りの人生でどれくらいの資金が必要か?
8.現在の勤務先で今後どれくらいの収入を得られるか? 6の必要資金を賄えるか?
9.転職先で今後どれくらいの収入を得られるか? 6の必要資金を賄えるか?
10.会社にとどまる、あるいは転職することについて、家族のコンセンサスが得られるか?

なお、「そんなのわからないよ」という項目については、保守的に判断するようにします。たとえば、1.現在の勤務先の将来性が「まったくわからない」なら、この項目については「応募する」と判断します。

以前は、早期退職に応募するというのは危険な賭けでした。しかし今は、応募せずに泥船に乗り続けるというのも、また危険な賭けです。チェックポイントを慎重に検討し、悔いのない人生の選択をしたいものです。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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